深海性のアブラツノザメは背びれ前方に毒棘を備え、毒性粘液を分泌します。刺傷時の症状と、現場での応急対応の流れを整理します。
毒を持つ深海ザメ:アブラツノザメの脅威
多くの人は「サメに毒はない」と考えがちですが、深海性のアブラツノザメは、背びれの前方に鋭い棘(毒棘)を持ち、毒性のある粘液を分泌します。
和名 | アブラツノザメ(英名: Spiny dogfish) |
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毒の部位 | 第一・第二背びれの前方に生えた棘(毒棘) |
危険な場面 | 定置網や底引網での混獲時の処理 |
1. 毒棘に刺された場合の症状
アブラツノザメの毒は致命的ではないとされますが、強烈な痛みを伴います。
- 即時的な症状:刺された直後から激しい灼熱感と痛みが生じます。患部は赤く腫れ、熱を持ちます。
- 遅発性の症状:毒の種類や量、体質によっては、吐き気・頭痛・全身倦怠感などの反応が出る場合があります。
- 後遺症:棘片が体内に残存したり、処置が不十分な場合は、組織壊死や化膿などの二次被害につながる可能性があります。
2. 刺された際の応急処置と治療
アブラツノザメの毒は熱に弱いと考えられています。速やかな温熱処置が痛みの緩和に役立つことがあります。
- 異物の除去:棘の破片が残っていないか確認し、ピンセットなどで慎重に取り除きます(無理に深部まで探らない)。
- 温浴(熱処理):耐えられる範囲の温度で40〜50℃程度の温かい湯に患部を30〜90分浸します。低温やけどに注意し、過熱は避ける(迷う場合は45℃未満を目安)。
- 医療機関の受診(必須):温浴はあくまで応急処置です。海洋生物による刺傷であることを伝え、必要に応じ破傷風予防や抗菌薬の評価、残存異物の確認を受けてください。
※既往症やアレルギー体質の方は、迷わず受診してください。症状増悪(腫れの拡大・発熱・強い痛み)の際も速やかに医療へ。
まとめ
アブラツノザメは、漁業従事者にとって要注意のサメです。魚の処理や仕分けの際は、背びれ前方の棘に接触しないよう、個体の固定と体位管理を徹底し、厚手の革手袋・耐刺突手袋など適切な保護具を着用してください。
FAQ(よくある質問)
刺された直後、冷やす? 温める?
アブラツノザメの刺傷は温浴(40〜50℃目安)が一般に推奨されます。冷却は痛みを増す場合があるため避け、低温やけどに注意して温熱で痛みを緩和します。
家庭での応急処置だけで十分?
いいえ。温浴はあくまで応急です。海洋生物の刺傷は感染や異物残存のリスクがあるため、必ず医療機関を受診してください。
予防のポイントは?
背びれ前方の棘に注意して個体固定を行い、耐刺突・耐切創手袋や前腕まで覆う防具を着用。作業者間で声掛け・役割分担を徹底します。
温浴の温度管理はどうする?
やけどリスクを避けるため、手で触れて熱すぎない範囲に保ち、必要に応じ温度計で確認。迷えば45℃未満を目安にしてこまめに湯を交換します。