深海に潜む体長わずか50cmの小さなサメ、ダルマザメ。人を襲う大型サメの怖さとは違う、その独特で奇妙な食性のために「深海の吸血鬼」とも呼ばれます。

この記事では、ダルマザメがどのようにして巨大な獲物から肉片を奪うのか、そしてなぜ人間の生活にも「迷惑」をかけるのかを解説します。


1. ダルマザメとは?:深海の小型吸血鬼

ダルマザメの概説
項目 内容
和名 / 英名 ダルマザメ / Cookiecutter Shark
体長 最大 50cm 前後
生息域 世界中の熱帯・温帯の外洋、水深1000m以深
行動 夜間に浅い層まで浮上する「垂直日周移動」

ダルマザメは、口の周りに発達した強靭な唇と、下顎に並ぶ大きく鋭い歯列が特徴。体色は茶色〜灰色で、喉のあたりに暗い「首輪模様」が入ることがあります。これが下方から小魚の影のように見え、擬態として働くとの見方もあります。


2. 「怖い食性」:肉をえぐり取る狩り方

ダルマザメの「怖さ」は、その特異な捕食方法にあります。

① クッキーカッター(円形の傷)のしくみ

  1. 強力な唇で皮膚に密着して吸い付く。
  2. 下顎の鋭い歯を体表に食い込ませる。
  3. 体をひねり回して円形の肉片をえぐり取る(クッキーの型抜きのように)。

被害を受けた獲物には、直径5cm前後の深い円形傷が残ります。これが英名「Cookiecutter Shark」の由来です。

② 人間への影響

通常は深海性で人との遭遇は少ないものの、夜間の深海作業ダイバーや遭難時の事例など、噛みつきの報告が過去にあります。傷は深いことがある一方、致命傷に至らないケースが多いとされます。


3. 人の生活に「迷惑」をかける理由

ダルマザメは光や微弱な電磁シグナルに反応して、海洋機器へ噛みつく被害が報告されています。

被害の対象と影響例
被害対象 具体的影響 解説
潜水艦・ソナー 保護膜やカバーの損傷 発光や振動・電気信号に反応し、表面を噛み破ることがある。
深海機器(ROVなど) 電源ケーブル等の破損 微弱電場を獲物と誤認して噛みつく。
海底通信ケーブル 一部損傷の痕跡 まれだが、円形の噛み跡が確認される例がある。

こうした背景から「迷惑なサメ」と呼ばれることがありますが、ダルマザメに悪意があるわけではなく、深海での生存戦略の結果といえます。


まとめ:小さくても侮れない強者

ダルマザメは、生物発光や吸着・回転による独特の捕食で、深海という過酷な環境を生き抜く小型の捕食者です。体の小ささに反してインパクトの大きい痕跡を残す、深海適応の象徴的な存在といえるでしょう。