ヒゲツノザメ（Mandarin Dogfish）図鑑

鼻先にナマズのような「長いヒゲ」を持つ、愛嬌たっぷりの深海ザメ。ずんぐりした体とつぶらな瞳が特徴的な、日本の深海にも住む珍種です。

基本情報

和名	ヒゲツノザメ（髭角鮫）
英名	Mandarin Dogfish
学名	Cirrhigaleus barbifer
分類	ツノザメ目ツノザメ科ヒゲツノザメ属
体長	0.9〜1.2m
生息域	大陸棚〜斜面の深海（水深140〜650m）
分布	西太平洋（日本近海〜オーストラリア、ニュージーランドなど）
IUCNレッドリスト	低懸念（LC）
危険度	★☆☆☆☆（1：背びれの棘に注意）

ツノザメの仲間ですが、他の種とは一線を画すユニークな特徴を持っています。

長いヒゲ：鼻孔の前にある皮膚（前鼻弁）が長く伸びて、まるでナマズのヒゲのようになっています。これは海底の獲物を探るセンサーの役割を果たしていると考えられます。
体型：体はずんぐりと太く、背中は盛り上がっています。皮膚はザラザラしています。
背びれの棘：「ツノザメ」の名が示す通り、2つの背びれの前には太く頑丈な棘（スパイン）が生えています。

深海の海底付近をゆっくりと泳ぎ、底生の魚類（ソコダラなど）やイカ、カニなどを捕食します。長いヒゲを使って砂泥の中の獲物を探知している可能性があります。

胎生（卵黄依存型）。一度に10匹前後の仔サメを産みます。一度の出産で産まれる数は、他のツノザメ類と同様に比較的少数です。

世界中に点在していますが、まとまって発見されることは少なく、詳しい生態は謎に包まれています。日本では相模湾から九州にかけての太平洋側で捕獲されることがあります。

深海性でおとなしいため、人を襲うことはありません。ただし、背びれの棘は鋭く丈夫なため、不用意に触ると怪我をする恐れがあります。

底引き網漁などで混獲されることがありますが、商業的な価値は低く、練り製品の原料になる程度です。その愛嬌のある顔つきから、水族館に搬入されると注目の的になりますが、深海ザメのため長期飼育は難しい種類です。

英名の由来：英名「Mandarin Dogfish」の「マンダリン」は、中国の官僚（マンダリン）が蓄えていた長い口髭に似ていることに由来すると言われています。
ヒゲのあるサメ：ヒゲを持つサメは他にもコモリザメやテンジクザメの仲間がいますが、ツノザメ目でこれほど立派なヒゲを持つのは本種くらいです。

ヒゲツノザメは、長いヒゲとずんぐりした体型が特徴的な、深海の癒やし系キャラです。そのユニークなヒゲは、暗い深海で生き抜くための重要なレーダーの役割を果たしています。

ヒゲは何のためにあるのですか？

触覚や味覚を感じるセンサーになっており、海底の砂の中にいる獲物を探すのに役立っていると考えられています。

どこで見られますか？

日本の太平洋側（相模湾以南）の深海に生息しています。水族館での展示は稀です。

危険ですか？

襲ってくることはありませんが、背びれに鋭いトゲがあるため、触るときは注意が必要です。