フクロザメ(Pocket Shark)図鑑
胸ビレの付け根に謎の「ポケット」を持つ、世界でも発見例がごくわずかな激レア深海ザメです。カンガルーのような袋は、一体何のためにあるのでしょうか?
基本情報
| 和名 | フクロザメ(袋鮫) |
|---|---|
| 英名 | Pocket Shark |
| 学名 | Mollisquama parini(チリ産)、M. mississippiensis(メキシコ湾産) |
| 分類 | ツノザメ目 ヨロイザメ科 フクロザメ属 |
| 体長 | 約14cm(極小) |
| 生息域 | 深海(水深330m以深) |
| 分布 | 南東太平洋(ペルー沖)、メキシコ湾(※世界で2箇所のみ確認) |
| IUCNレッドリスト | 低懸念(LC) |
| 危険度 | ★☆☆☆☆(1:小さすぎて危険はない) |
形態:名前の由来「ポケット」
フクロザメは全長14cmほどしかない、非常に小さなサメです。頭は丸く、クジラのような可愛らしい顔をしています。
胸ビレのポケット
最大の特徴は、胸ビレのすぐ上の付け根にある「袋状の穴(ポケット)」です。 英名の「Pocket Shark」は、「ポケットに入るほど小さい」という意味ではなく、この「ポケットのような器官を持っている」ことに由来します。 和名の「フクロザメ」も同様です。
発光する体
腹部には多数の発光器があり、光ることができます。
生態:ポケットの正体
長年の謎でしたが、近年の研究(2015年の2例目の発見以降)により、このポケットの役割が解明されつつあります。
発光液の噴射
ポケットの内側には発光腺があり、ここから「光る液体(発光液)」を分泌・噴射できると考えられています。 敵に襲われた際に、この光る液を煙幕のように放出して相手を驚かせたり、目くらましにしたりして逃げるための防御器官である可能性が高いです。 イカが墨を吐くのと似たような役割を、光る液体で行っているのかもしれません。
トリビア
- 超レアな発見:最初の個体は1979年にペルー沖で発見されました(M. parini)。その後、2010年にメキシコ湾で2例目が発見されるまで、30年以上もの間、世界でたった1匹しか知られていない「幻のサメ」でした。
- 新種の発見:2例目の個体は詳細な研究の結果、最初の個体とは別の新種(M. mississippiensis)であることが2019年に判明しました。
まとめ
フクロザメは、胸ビレに秘密のポケットを隠し持った、小さくて不思議な深海ザメです。そのポケットから光る液を出して身を守るという、まるでスパイ映画のような生態を持っています。広い海には、まだ私たちが知らない不思議なサメがたくさんいることを教えてくれる存在です。
関連
FAQ(よくある質問)
ポケットには何が入っていますか?
カンガルーのように子供を入れるわけではありません。中には発光液を出す分泌腺があると考えられています。
どこで見られますか?
これまでにペルー沖とメキシコ湾の2箇所でしか見つかっていません。水族館で見ることはできません。
名前の由来は?
胸ビレの付け根にある「ポケット状の器官」が由来です。「小さいからポケットサイズ」という意味ではありません。
参考文献・出典
- FishBase
- Grace, M. A. et al. (2019). “A new Western North Atlantic Ocean kitefin shark…”. Zootaxa.