ワニグチツノザメ(Viper Dogfish)

深海のサメ

ワニグチツノザメ(Viper Dogfish)図鑑

まるでエイリアン。顎が大きく飛び出し、鋭い牙のような歯がむき出しになる、衝撃的な見た目の深海ザメです。

基本情報

和名 ワニグチツノザメ(鰐口角鮫)
英名 Viper Dogfish
学名 Trigonognathus kabeyai
分類 ツノザメ目 カラスザメ科 ワニグチツノザメ属
体長 約30〜54cm(小型)
生息域 大陸棚斜面の深海(水深150〜360m付近)
分布 日本近海(紀伊半島、小笠原、徳島など)、ハワイ、台湾
IUCNレッドリスト データ不足(DD)
危険度 ★☆☆☆☆(1:小型で遭遇しないが歯は鋭い)

形態:エイリアンのような顎

ワニグチツノザメは、その名の通り「ワニ」のような、あるいは「毒蛇(Viper)」のような恐ろしい口元が最大の特徴です。

  • 飛び出す顎:顎の骨格が特殊で、口を大きく開けると顎全体が前方に突き出します。その可動域はミツクリザメをも凌ぐと言われています。
  • 牙のような歯:針のように細長く鋭い歯がまばらに並んでおり、獲物を噛み切るのではなく「突き刺して逃さない」ための形状をしています。
  • 発光器:腹側には無数の発光器があり、青白く光ります。

生態

捕食:一撃必殺の串刺し

主食は深海のハダカイワシなどの小魚や甲殻類です。 獲物を見つけると、顎を瞬間的に突き出して襲いかかり、長い牙で獲物を串刺しにして捕らえます。そして、顎を引っ込めると同時に獲物を口の奥へと放り込み、丸呑みにします。

分布と発見

1986年に愛知県沖で初めて発見され、1990年に新種として記載された比較的新しいサメです。 世界でも日本近海(紀伊半島、土佐湾、小笠原諸島など)やハワイなど限られた場所でしか見つかっておらず、捕獲例も非常に少ないレアなサメです。

繁殖

胎生(卵黄依存型)。一度に数匹の仔サメを産むと考えられていますが、詳しいことはほとんど分かっていません。

人との関わり・危険性

深海性で小型なため、人が襲われることはありません。 商業的な価値はなく、漁業で稀に混獲される程度です。しかし、その奇妙な姿から水族館やサメファンの間ではカルト的な人気を誇ります。 飼育は極めて難しく、水族館に搬入されても数日と生きることはありません。

トリビア

  • 学名の由来:種小名の kabeyai は、発見者である船長「壁谷弘」氏に献名されたものです。日本人が発見に関わったサメです。
  • 英名の由来:「Viper Dogfish」は、その長い牙と大きく裂けた口が「クサリヘビ(Viper)」を連想させることから名付けられました。

まとめ

ワニグチツノザメは、飛び出す顎と鋭い牙を持つ、深海の小さなモンスターです。そのエイリアンのような捕食シーンは衝撃的で、深海生物の進化の不思議さを象徴する存在です。

FAQ(よくある質問)

ミツクリザメと同じですか?

いいえ、全く別の種類です。ミツクリザメは大きく(3m超)、ワニグチツノザメは小さい(50cm程)です。顎が飛び出す点は似ていますが、進化の系統は異なります。

どこで見られますか?

主に日本の紀伊半島沖や小笠原諸島などの深海に生息しています。水族館での生体展示はほぼ不可能です。

人を襲いますか?

いいえ。小さすぎて人を襲うことはありませんが、歯が非常に鋭いため、触れると怪我をする恐れがあります。

参考文献・出典

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