コギクザメ(Pygmy Shark)図鑑
大人になっても約25cm。「世界で2番目に小さい」極小のサメです。夜になると深海から海面まで浮上し、お腹を青白く光らせる神秘的な姿を持っています。
基本情報
| 和名 | コギクザメ(小菊鮫) |
|---|---|
| 英名 | Pygmy Shark |
| 学名 | Euprotomicrus bispinatus |
| 分類 | ツノザメ目 ヨロイザメ科 コギクザメ属 |
| 体長 | 20〜27cm(最大でも約27cm。メスの方が大きい) |
| 生息域 | 外洋の中層〜深海(昼は深場、夜は表層) |
| 分布 | 太平洋、インド洋、大西洋の熱帯〜亜熱帯海域に広く散在 |
| IUCNレッドリスト | 低懸念(LC) |
| 危険度 | ★☆☆☆☆(1:小さすぎて危険はない) |
形態:世界最小級のボディ
コギクザメは、ツラナガコビトザメ(約20cm)に次いで世界で2番目に小さいサメと言われています。成魚でも人間の手のひらに収まるサイズです。
特徴的な見た目
- 体型:円筒形の細長い体をしており、頭は丸みを帯びています。目は大きく、深海のわずかな光を捉えます。
- ヒレ:第一背びれは非常に小さく、体の後ろの方(腹びれのあたり)についています。逆に第二背びれは大きく目立ちます。尾びれは団扇(うちわ)のように丸い形をしています。
- 発光器:腹側には無数の微小な発光器がびっしりと並んでおり、暗闇で緑色〜青白く発光します。背側には発光器がないため、光りません。
ダルマザメとの見分け方
よく似たダルマザメとは、以下の点で区別できます。
- 首輪模様:ダルマザメにある「首のエラ周りの黒い帯(首輪模様)」が、コギクザメにはありません。
- 背びれの位置:コギクザメの第一背びれは、ダルマザメよりもずっと後ろ(尾に近い方)にあります。
生態:夜の海面への旅
日周鉛直移動
コギクザメは、毎日ダイナミックな移動を行います。 昼間は水深300m以深(時には数千m)の暗い深海に潜んでいますが、夜になると餌を求めて海面直下(水深0m付近)まで浮上してきます。 このため、夜間の海洋調査船のライトに集まってくる姿が観察されることがあります。
食性
鋭い歯を持っていますが、ダルマザメのように大型動物の肉をえぐり取ることはほとんどないと考えられています。 主に深海のイカ(ツメイカ類など)、小型の魚類、甲殻類を捕食しています。丸い口で獲物に吸い付き、鋭い下顎の歯で噛み付いて食べます。
発光の役割
腹部を発光させることで、海面から降り注ぐ月明かりや星明かりに自分の影を溶け込ませる「カウンターイルミネーション」を行い、下から狙ってくる捕食者(大型の魚やイカ)から身を隠していると考えられています。
繁殖
胎生(無胎盤性胎生)。一度に8匹前後の仔サメを産みます。生まれた時のサイズは約6cm〜10cmと、非常に小さいです。
トリビア
- 名前の由来:和名の「コギク(小菊)」は、小さくて丸いヒレや発光器の様子を、可愛らしい菊の花に見立てたものだと言われています(諸説あり)。英名の「Pygmy Shark」は直訳で「小人のサメ」を意味します。
- 分布の謎:世界中の広い海域に点在していますが、体が小さく網をすり抜けてしまうため、正確な生息数や詳しい分布域はよく分かっていません。
まとめ
コギクザメは、手のひらサイズの小さな体で、深海と海面を毎日往復するタフなサメです。お腹を光らせて身を守りながら、広い外洋を旅しています。水族館で見ることはまずできませんが、海の広さと多様性を象徴する愛らしい存在です。
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FAQ(よくある質問)
Q. ダルマザメと同じですか?
いいえ、別の種類です。コギクザメの方がさらに小さく、背びれの位置が後ろにあります。また、ダルマザメのような首の黒い帯模様がありません。
Q. どのくらい小さいですか?
大人になっても20〜27cm程度です。鉛筆2本分くらいの長さしかありません。
Q. どこで見られますか?
世界中の暖かい海の外洋にいますが、小さくて深海性なので見つけるのは非常に難しいです。夜の海面で稀に見つかることがあります。
Q. 人を襲いますか?
全く襲いません。口も小さく、人間に危害を加えることは不可能です。