ラブカ

Chlamydoselachus anguineus 深海のサメ / 現生のサメ

ラブカ(Frilled Shark)図鑑|シン・ゴジラのモデル?生きた化石の謎

深海の暗闇で、3億年以上も姿を変えずに生き続けてきた「生きた化石」。
映画『シン・ゴジラ』のモデルとも噂されるその姿は、サメというより怪獣?
6対のエラ、300本の悪魔の歯、そして3年半に及ぶ驚異的な妊娠期間…。
サメ好きの息子と管理人が、深海の神秘「ラブカ」の正体に迫ります。

基本情報

和名 ラブカ(羅鱶)
英名 Frilled Shark(フリルド・シャーク)
学名 Chlamydoselachus anguineus
分類 カグラザメ目 ラブカ科 ラブカ属
体長 オス:約1.6m / メス:約2.0m(最大2m超)
生息域 水深500〜1000mの深海(大陸斜面)
分布 世界各地の深海に点在(日本近海では駿河湾・相模湾が有名)
IUCNレッドリスト 準絶滅危惧(NT)
危険度 ★☆☆☆☆(1:深海性のため人に危害を加えることはない)

形態と特徴:なぜ「生きた化石」なのか?

ラブカは、恐竜時代(白亜紀)やそれ以前から骨格の特徴がほとんど変わっていない、まさにタイムカプセルのようなサメです。

1. 名前の由来と「6対のエラ」

英名「Frilled Shark(フリルのあるサメ)」の由来となったのが、特徴的なエラです。
普通のサメのエラ穴(鰓裂)は5対ですが、ラブカには6対あります。
しかも、一番目のエラは喉の下で左右がつながっていて、まるで襟巻き(フリル)のように見えるのです。

🦈 豆知識:なぜエラが6つあるの?

多くのサメはエラ穴(鰓孔)が5対ですが、ラブカやカグラザメなど一部のサメは6対(エビスザメなどは7対)持っています。
これは単なる個体差ではなく、「原始的なサメの特徴」そのものです。彼らが古代から姿を変えずに生き残ってきた証拠の一つと言われています。

2. 恐怖の「悪魔の歯」

口の中には、約300本もの白い歯がびっしりと並んでいます。
1本の歯が3つに枝分かれして尖っている「三尖頭(さんせんとう)」という独特な形をしており、まるで忍者の使う「まきびし」のようです。

この歯は「肉を切る」ためではなく、「引っ掛ける」ためのもの。
主食であるイカのヌルヌルした体を、マジックテープ(ベルクロ)のようにガッチリと絡め取り、一度噛みついたら二度と逃がしません。以下はラブカと一般的なサメのはの違いの比較イメージ画像です。

ラブカと一般的なサメのはの比較

3. 「羅紗(ラシャ)」のような肌

和名「ラブカ」の「ラ(羅)」は、毛織物の「羅紗(ラシャ)」に由来します。
普通のサメのようなザラザラした「サメ肌」ではなく、小さな鱗がまばらに生えており、独特の手触りをしていると言われています。

生態:驚愕の妊娠期間

世界最長の妊娠期間「3年半」

ラブカには、見た目以上に驚くべき生態があります。それは、赤ちゃんがお腹の中にいる期間です。
人間は約10ヶ月、ゾウでも約22ヶ月ですが、ラブカの妊娠期間はなんと最大で3.5年(42ヶ月)にも及ぶと考えられています。
これは脊椎動物の中で世界最長の記録です。

深海の冷たい海では成長が遅いため、過酷な環境で生き抜けるよう、お腹の中で時間をかけて大きく育ててから産む「生存戦略」だと考えられています。

ウナギのような泳ぎ方

「サメ」と聞いてイメージするような素早い泳ぎではなく、体をくねらせてウナギやヘビのように泳ぎます。
この動きから、大昔の船乗りたちが目撃した「巨大海蛇(シーサーペント)」の正体は、実はラブカだったのではないかという説もあります。

ラブカと「シン・ゴジラ」の関係

2016年公開の映画『シン・ゴジラ』に登場するゴジラ第2形態(通称:蒲田くん)は、ラブカがモデルではないかとファンの間で大きな話題になりました。

  • 巨大な目:まぶたがなく、見開いたような丸い目。
  • エラ:赤くめくれ上がったようなエラの形状。
  • 歯:不揃いに並んだ乱杭歯(らんぐいば)。

公式な明言はありませんが、特徴があまりにも酷似していることから、深海の怪物が現代の怪獣デザインに影響を与えたことは間違いなさそうです。

ラブカに会いたい!見れる水族館ガイド

「こんな凄いサメ、一度でいいから見てみたい!」と思った方へ。
生きた個体を見るのは非常に難しいですが、標本なら会える場所があります。

生きたラブカには会える?

現在、常設展示している水族館はありません。
深海からの水圧・水温の変化に極めて弱く、搬入されても数日で死亡してしまうことがほとんどだからです。
しかし、冬〜春(12月〜4月頃)にかけて、駿河湾などの底引き網漁で混獲されることがあり、以下の水族館で数日間だけ緊急展示されることがあります。

標本・剥製ならここで見れる!

生体ではなくても、その迫力を間近で観察できる施設です。

🦈 管理人の「サメ愛」メモ:息子との観察日記

息子に初めてラブカの写真を見せた時、彼は目を丸くして叫びました。
「うわっ!これ本当にサメ? 巨大なウナギかヘビみたい!」

鋭い観察眼です。実は学名の anguineus(アンギネウス)は、ラテン語で「ヘビのような」という意味。泳ぎ方もサメらしくなく、体をくねらせて泳ぐんです。

「顔がめっちゃ怖い…ニヤって笑ってるみたいで不気味…」と息子は少し引いていましたが(笑)、これは口が顔の真正面(端っこ)まで大きく裂けているから。
普通のサメは口が頭の下にありますが、ラブカは原始的だから「前」にあるんです。
「目が死んでる(瞬膜がない)」「肌がボロボロ?」といった息子の率直な感想の一つ一つが、実はこのサメが「生きた化石」であることの証明なんですよね。

まとめ

ラブカは、恐ろしい顔と「生きた化石」という二つの顔を持つ、深海のミステリーそのものです。
ウナギのような体で泳ぎ、300本の歯で獲物を逃さず、3年半もかけて子供を育てる。その生態を知れば知るほど、ただ「怖い」だけではない、生命の神秘を感じずにはいられません。

もし水族館でラブカ(の標本)を見かけたら、ぜひその「エラ」と「口」をじっくり観察してみてください。
そこには、3億年前から変わらない太古の海の記憶が刻まれているはずです。

ラブカの塗り絵

FAQ(よくある質問)

Q1. ラブカは人を襲いますか?

いいえ。水深500m以深の深海に生息しているため、人が泳ぐ場所には現れません。性格も比較的おとなしく、人を襲うことはまずありません。

Q2. 食べられますか?美味しいですか?

底引き網漁で混獲されることがありますが、水っぽくて美味しくないため、市場にはほとんど流通しません。一部の地域や練り製品の原料として使われる程度です。

Q3. 6対のエラを持つサメは他にいますか?

はい。同じカグラザメ目の「カグラザメ」や「シロカグラ」も6対のエラを持っています。さらに「エビスザメ」は7対のエラを持っています。これらは全て原始的な特徴を残すサメたちです。

参考文献・出典

上部へスクロール