アカシュモクザメ

Sphyrna lewini 現生のサメ

アカシュモクザメ(Scalloped Hammerhead)図鑑

頭の前縁が「波打っている」のが名前の由来。数百匹もの大群で回遊する姿がダイバーに大人気のハンマーヘッドシャークです。

基本情報

和名 アカシュモクザメ
英名 Scalloped Hammerhead
学名 Sphyrna lewini
分類 メジロザメ目 シュモクザメ科 シュモクザメ属
体長 平均 2.5〜3.0m(最大 4.3m の記録あり)
体重 80〜150kg
生息域 沿岸から外洋の表層〜中層(水深275m以深への潜水も確認)
分布 世界中の温帯〜熱帯海域(日本近海を含む)
IUCNレッドリスト 深刻な危機(CR) ※2019年評価更新
危険度 ★★★☆☆(3:大型で潜在的に危険だが、事故は少ない)

形態

シュモクザメ類の中では中〜大型種です。最大の特徴は、ハンマー型頭部(セファロフォイル)の形にあります。

  • 頭部の形:前縁の中央に「くぼみ」があり、全体的に波打ったような形をしています。英名「Scalloped(ホタテガイの縁のような)」はこれに由来します。
  • 識別ポイント:
    • ヒラシュモクザメ:前縁が一直線に近い。
    • シロシュモクザメ:前縁が丸くカーブし、くぼみがない。
    • アカシュモクザメ:前縁中央にくぼみがある。
  • 体色:背側はオリーブ色がかった褐色〜灰色で、腹側は白です。

生態

行動:圧巻の「リバー」

日中は、数百匹単位の大規模な群れ(スクール)を作って海山周辺などを回遊することで有名です。この群れはダイバーの間で「ハンマーヘッド・リバー」と呼ばれ、ガラパゴス諸島やココ島などが聖地となっています。夜になると群れを解き、単独で狩りに出かけます。

食性

魚類(イワシ、アジなど)やイカ・タコ類を主食としますが、小型のサメやエイも捕食します。

繁殖

胎生(卵黄依存型)。妊娠期間は約9〜10か月で、一度に15〜30尾ほどの仔を産みます。浅い沿岸域(マングローブ林など)を幼魚の育成場として利用します。

人との関わり・危険性

大型になるため潜在的な危険性はありますが、ヒラシュモクザメに比べると攻撃性は低く、ダイバーに対し臆病な反応を示すことも多いです。ただし、餌付けや刺激を与えると危険なため注意が必要です。

群れを作る習性のため、漁業で一度に大量捕獲されやすく、フカヒレ目的の乱獲で個体数が激減しました。現在はIUCNレッドリストで「深刻な危機(CR)」に指定され、国際的な取引規制(ワシントン条約)の対象となっています。

トリビア

  • 和名の由来:「アカ」シュモクザメという名前ですが、体が赤いわけではありません。肉(筋肉)が少し赤みを帯びていることや、体色が赤褐色に見えることがあるためと言われます。
  • 日焼けするサメ:幼魚は浅瀬で強い日差しを浴びるため、体色が黒く変化(日焼け)することが知られています。これはサメ類では珍しい現象です。

まとめ

アカシュモクザメは、頭の中央にある「くぼみ」と、美しい群れを作る習性が特徴的なサメです。ダイビングの人気者ですが、乱獲により絶滅の危機に瀕しています。彼らの群れがいつまでも見られるよう、保全が求められています。

FAQ(よくある質問)

Q1. アカシュモクザメは人を襲いますか?

基本的には臆病で、人を積極的に襲うことは稀です。ただし大型個体は力も強いため、不用意な接近は避けるべきです。

Q2. 他のハンマーヘッドとの見分け方は?

頭の前の縁(ふち)を見てください。中央が少し「くぼんでいる」のがアカシュモクザメです。(一直線ならヒラシュモクザメ、丸ければシロシュモクザメ)

Q3. なぜ群れを作るのですか?

まだ完全には解明されていませんが、繁殖パートナー探しや、効率的な移動、社会的なコミュニケーションのためと考えられています。

Q4. どこで見られますか?

世界中の暖かい海にいます。日本では伊豆諸島の神子元島(みこもとじま)や沖縄の与那国島が、群れが見られるスポットとして有名です。

参考文献・出典

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