イコクエイラクブカ(Tope Shark)

現生のサメ

イコクエイラクブカ(Tope Shark)図鑑

「スープフィン・シャーク(フカヒレザメ)」という別名を持つ、かつて世界中で乱獲されたサメ。美味しい肉と極上のヒレを持つがゆえに、絶滅の危機に瀕しています。

基本情報

和名 イコクエイラクブカ(異国永楽鱶)
英名 Tope Shark / Soupfin Shark
学名 Galeorhinus galeus
分類 メジロザメ目 ドチザメ科 イコクエイラクブカ属
体長 平均 1.2〜1.5m(最大約2m)
体重 20〜40kg
生息域 大陸棚の沿岸〜沖合の底層(水深0〜500m)
分布 世界中の温帯海域(地中海、南アフリカ、オーストラリア、カリフォルニアなど)※日本には分布しないとされる
IUCNレッドリスト 深刻な危機(CR)
危険度 ★☆☆☆☆(1:人への危険性は低い)

形態

イコクエイラクブカは、ドチザメ科の中でもスマートな流線型の体型をしています。

  • 吻(口先):長く尖っており、半透明に見えるほど薄いです。
  • 目:猫のような細長い瞳孔を持ち、瞬膜(目を守る膜)があります。
  • 尾びれ:上葉の先端には大きな欠刻(切れ込み)があり、独特の形をしています。これは「スープフィン」と呼ばれる大きなヒレの特徴でもあります。
  • エイラクブカとの違い:日本にいるエイラクブカと似ていますが、イコクエイラクブカの方が大型になり、背びれの形などが異なります。

生態

回遊と群れ

非常に活発なサメで、季節によって長距離を回遊します。イギリスからアフリカまで移動した記録もあります。 また、性別やサイズごとに分かれて大きな群れ(スクール)を作る習性があり、これが漁業での一網打尽につながってしまいました。

食性

底生魚やイカ、甲殻類を好んで捕食します。鋭い歯を使って素早く獲物を捕らえます。

繁殖

胎生(卵黄依存型)。妊娠期間は約1年で、一度に6〜52匹もの仔サメを産みます。多産なサメですが、成長が遅く(成熟まで10年以上)、乱獲からの回復には長い時間がかかります。

人との関わり・危険性

人に対して危険なサメではありません。 しかし、人間にとっては最も利用価値の高いサメの一つでした。

スープフィン・シャークの悲劇

肉はクセがなく非常に美味で、フィッシュ&チップスなどの材料として人気があります。肝臓からは良質なビタミンA(肝油)が取れ、ヒレは最高級のフカヒレになります。 このため、1930年代〜40年代にかけて世界中で「ゴールドラッシュ」ならぬ「サメラッシュ」が起き、徹底的に乱獲されました。

現在の状況

乱獲の結果、個体数は激減し、現在はIUCNレッドリストで最も絶滅のリスクが高い「深刻な危機(CR)」に指定されています。多くの国で保護や漁獲規制が行われていますが、回復は道半ばです。

トリビア

  • 名前の由来:和名の「イコク(異国)」は、日本にはおらず海外に分布することから。エイラクブカに似た異国のサメ、という意味です。
  • ビタミンAの源:かつてはビタミンAの主要な供給源でしたが、合成ビタミンが開発されたことで肝油需要は減りました。しかし、今度はフカヒレ需要が脅威となっています。

まとめ

イコクエイラクブカは、その有用性ゆえに人間に翻弄されてきたサメです。「スープフィン」という名前は、フカヒレ文化と乱獲の歴史を物語っています。美味しいサメですが、今は食べるよりも守るべき存在となっています。

FAQ(よくある質問)

日本にいますか?

いいえ。基本的には日本近海には分布していません。日本にいるのは近縁種の「エイラクブカ」です。

なぜ「スープフィン」と呼ばれるのですか?

このサメのヒレ(フィン)から取れるフカヒレの繊維(金糸)が非常に太く上質で、スープの材料として最高級品とされたからです。

危険ですか?

いいえ。中型で歯もそれほど大きくないため、人を襲うことはありません。

参考文献・出典

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