カマストガリザメ

Carcharhinus falciformis 現生のサメ

カマストガリザメ(Spot-tail shark)図鑑

ヒレ先の黒い模様が特徴的な中型サメ。性別や成長段階で群れを分ける、社会的な習性を持つことで知られます。

基本情報

和名 カマストガリザメ
英名 Spot-tail shark / Sorrah shark
学名 Carcharhinus sorrah
分類 メジロザメ目 メジロザメ科 メジロザメ属
体長 1.0〜1.6m(最大でも約1.6m程度の中型種)
体重 20〜30kg程度
生息域 大陸棚の沿岸〜浅海(水深70m以浅が多い)
分布 インド洋〜西太平洋の熱帯・亜熱帯海域(紅海、東南アジア、オーストラリア、日本近海など)
IUCNレッドリスト 絶滅危惧(EN) ※2021年評価
危険度 ★★☆☆☆(2:通常はおとなしいが注意は必要)

形態

カマストガリザメは、メジロザメ科に属するスマートな体型のサメです。

  • ヒレの黒斑:第二背びれ、胸びれ、尾びれの下葉(下側)の先端が、くっきりと黒く縁取られています。特に尾びれ下葉の黒斑が目立つため、英名「Spot-tail(尾の斑点)」の由来になっています。
  • 体色:背は青灰色〜灰褐色で、腹は白。肌はなめらかで光沢があります。
  • 吻:やや長く尖っており、流線型の体は素早い遊泳に適しています。

生態

群れ行動:性別による分離

非常に社会的なサメで、性別や年齢ごとに群れを分ける習性があります。

  • 成体雄と非妊娠雌の群れ
  • 妊娠中の雌の群れ
  • 幼体の群れ

このように分かれることで、繁殖や成長に適した環境を効率よく確保していると考えられています。

食性

イワシやサバなどの小型回遊魚を主に捕食します。イカや甲殻類を食べることもあります。群れで小魚の群れに突入し、旋回して捕らえる姿が観察されます。

繁殖

胎生(胎盤形成型)。妊娠期間は約10か月で、一度に1〜8匹(平均3〜4匹)の仔を産みます。浅い沿岸域を保育場として利用します。

人との関わり・危険性

人を積極的に襲うことはほとんどありませんが、餌がある状況(漁獲物や撒き餌)では興奮して攻撃的になることがあるため、注意が必要です。

沿岸の浅い場所に生息するため、延縄漁や底引き網、定置網での混獲が非常に多いサメです。肉やヒレが利用されることもあり、乱獲により個体数は減少傾向にあります。IUCNレッドリストでは、以前の「準絶滅危惧(NT)」から、現在は「絶滅危惧(EN)」へと評価が引き上げられ、保護の必要性が高まっています。

トリビア

  • 名前の混乱:英名「Blacktip Shark」は、日本では「クロトガリザメCarcharhinus limbatus)」を指します。本種「カマストガリザメ」は英名「Spot-tail shark」であり、別種です。
  • 和名の由来:「カマストガリ」は、吻が尖っていて体型が魚の「カマス」に似ていることに由来すると言われています。

まとめ

カマストガリザメは、ヒレ先の黒斑とスマートな体型が特徴的な中型サメです。性別で群れを分けるユニークな生態を持ち、沿岸の生態系で重要な役割を果たしています。しかし漁業の影響を強く受けており、現在は絶滅が危惧されています。

FAQ(よくある質問)

Q1. カマストガリザメは人を襲いますか?

基本的にはおとなしいですが、餌がある状況では攻撃的になることがあり、注意が必要です。

Q2. クロトガリザメと同じですか?

いいえ、別種です。クロトガリザメ(Blacktip Shark)の方が大型になります。カマストガリザメは「Spot-tail shark」とも呼ばれます。

Q3. どのくらい大きくなりますか?

最大でも1.6m程度の中型サメです。3m近くになるクロトガリザメより小型です。

Q4. 群れを作るのは珍しいのですか?

サメの中では比較的珍しく、特に性別や成長段階ではっきりと群れを分ける行動は研究対象になっています。

Q5. 絶滅の心配はありますか?

はい。IUCNでは「絶滅危惧(EN)」に分類されており、沿岸漁業による混獲で減少しています。

参考文献・出典

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