クサリトラザメ(Chain Catshark)

現生のサメ

クサリトラザメ(Chain Catshark)図鑑

その名の通り「鎖(チェーン)」のような網目模様が特徴。紫外線で緑色に光る能力を持つ、美しく不思議な小型サメです。

基本情報

和名 クサリトラザメ(鎖虎鮫)
英名 Chain Catshark
学名 Scyliorhinus retifer
分類 メジロザメ目 トラザメ科 トラザメ属
体長 約40〜50cm(最大でも60cm未満)
体重 1kg未満
生息域 大陸棚外縁〜斜面の海底(水深70〜550m)
分布 北大西洋西部(アメリカ東海岸、メキシコ湾など)
IUCNレッドリスト 低懸念(LC)
危険度 ★☆☆☆☆(1:小さくおとなしい)

形態:チェーン模様と蛍光

クサリトラザメは、日本のトラザメと同じグループに属する小型のサメです。

  • 模様:黄褐色の地に、黒い線が複雑に絡み合った網目模様が入っています。これが鎖(Chain)のように見えることが名前の由来です。この模様は海底の石や海藻に紛れるカモフラージュになります。
  • 生物蛍光:近年の研究で、皮膚に特殊なタンパク質を持ち、青い光(深海に届く光)を受けると緑色に蛍光することが判明しました。これは仲間同士のコミュニケーションに使われている可能性があります。
  • 目:猫のように細長い瞳孔と、美しい緑色の目を持っています。

生態

食性

底生性で、海底を這うように泳ぎながらイカ、小型の魚、甲殻類(エビ・カニ)などを捕食します。

繁殖

卵生です。一度に2個の卵を産みます。 卵は「マーメイドの財布」と呼ばれる丈夫な殻に包まれており、四隅から伸びた長い蔓(つる)で海藻やサンゴに絡みつきます。 孵化するまでには水温によりますが8〜12ヶ月ほどかかります。

生息環境

アメリカ東海岸の深場(水深100m以深)に生息しており、水温の低い環境を好みます。そのため、飼育下でも低温管理が必要です。

人との関わり・危険性

非常に小さくおとなしいため、人に危害を加えることはありません。 その美しい模様と小ささから、世界中の水族館で飼育展示されており、人気があります。 繁殖も比較的容易なため、サメの発生学や蛍光現象の研究モデルとしても利用されています。

トリビア

  • 光る理由:人間にはただの網目模様に見えますが、特殊なフィルター(サメの目を通した視界)で見ると、模様の部分が明るく浮き上がって見えます。これにより、薄暗い海の中で同種を識別していると考えられています。
  • じっとしている:昼間はほとんど動かず、岩陰などで休んでいます。

まとめ

クサリトラザメは、鎖のような模様が美しい、小さな深海のサメです。ただ綺麗なだけでなく、暗闇で光るという秘密の能力を持っています。水族館で見かけたら、その美しい模様をじっくり観察してみてください。

FAQ(よくある質問)

光るのを見ることができますか?

通常の状態では光って見えません。部屋を暗くして、特殊なブルーライトを当てて、さらに黄色いフィルターを通して見ると、緑色に蛍光しているのが分かります。

日本にいますか?

いいえ。野生個体はアメリカ東海岸などに生息しています。日本の海にはいませんが、水族館ではよく見られます。

飼育はできますか?

水族館では定番ですが、低温(15℃前後)を好むため、一般家庭での飼育には水槽用クーラーなどの設備が必要です。

参考文献・出典

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