コモリザメ（Nurse Shark）図鑑

丸いヒレと愛嬌のある顔が特徴。日本にいる「オオテンジクザメ」のそっくりさんですが、大西洋に住む別のサメです。強力な吸引力で獲物を吸い込みます。

基本情報

和名	コモリザメ（子守鮫）
英名	Nurse Shark
学名	Ginglymostoma cirratum
分類	テンジクザメ目コモリザメ科コモリザメ属
体長	平均 2.2〜2.7m（最大3mを超える）
体重	70〜110kg
生息域	沿岸の浅瀬、サンゴ礁、マングローブ（水深0〜75m）
分布	大西洋東部・西部、東太平洋の熱帯〜亜熱帯海域（※日本近海には分布しない）
IUCNレッドリスト	危急（VU）
危険度	★★☆☆☆（2：非常におとなしいが噛む力は強い）

日本の水族館や海で見られる「オオテンジクザメ」と非常によく似ていますが、以下の点で見分けられます。

夜行性で、夜になると海底を泳ぎ回り、魚、甲殻類（エビ・カニ）、タコ、貝類などを捕食します。最大の特徴は「吸い込み捕食」です。獲物を見つけると、口を密着させて瞬時に喉を広げ、掃除機のような猛烈な勢いで海水ごと獲物を吸い込みます。この時の吸い込む音は水中でも「ズオッ」と聞こえるほどです。

昼間は岩陰や洞窟で休みます。社会性が強く、数十匹が重なり合うようにして集団で寝ている姿（通称：サメ団子）がよく観察されます。多くのサメと違い、泳ぎ続けなくてもエラを動かして呼吸ができるため、海底でじっとしていられます。

胎生（卵黄依存型）。妊娠期間は約6ヶ月と比較的短く、一度に20〜30匹の仔サメを産みます。オオテンジクザメ（卵食型）とは繁殖様式が異なります。

非常に温厚で、人が近づいても逃げたり襲ってきたりすることはめったにありません。カリブ海やフロリダでは、ダイビングやシュノーケリングでの観察対象として人気があります。

しかし、完全に無害ではありません。しつこく追い回したり、尻尾を掴んだりして怒らせると、強力な顎で噛み付くことがあります。一度噛み付くと離さない習性があるため、大怪我につながる事例も報告されています。

名前の由来：和名の「コモリザメ（子守鮫）」は、卵ではなく子供を産むことや、お腹の大きなメスが海底で休んでいる姿が「子供を守っている」ように見えたことから名付けられたと言われています。
英名の由来：英名「Nurse Shark（ナースシャーク）」の由来は、吸い込む音が「授乳（Nursing）」に似ているから、あるいは古語の「Nusse（海の猫）」が転じたなど、諸説あります。

コモリザメは、丸いヒレと愛嬌のある顔を持つ、大西洋の癒やし系サメです。日本ではオオテンジクザメと混同されがちですが、ヒレの形を見れば区別できます。その強力な吸引力は、サメの進化の多様性を物語っています。

オオテンジクザメとの違いは？

一番の違いは「ヒレの形」です。コモリザメの背びれ・胸びれは丸いですが、オオテンジクザメは尖っています。また、コモリザメは大西洋、オオテンジクザメはインド太平洋（日本含む）に住んでいます。

人を襲いますか？

基本的には襲いません。非常に温厚です。ただし、イタズラをすると噛み付くことがあり、顎の力が強いため危険です。

どこで見られますか？

野生ではカリブ海やフロリダ沿岸などでよく見られます。日本の水族館でも飼育されていることがありますが、オオテンジクザメであることも多いです。