サンゴトラザメ(Coral Catshark)

現生のサメ

サンゴトラザメ(Coral Catshark)図鑑

サンゴ礁の隙間を器用に泳ぐ、細長く美しいサメ。その愛らしい姿と飼育のしやすさから、水族館だけでなく個人のアクアリウムでも人気のある「猫のようなサメ」です。

基本情報

和名 サンゴトラザメ(珊瑚虎鮫)
英名 Coral Catshark
学名 Atelomycterus marmoratus
分類 メジロザメ目 トラザメ科 サンゴトラザメ属
体長 平均 50〜60cm(最大 70cm 程度)
生息域 熱帯のサンゴ礁(浅瀬の隙間や穴の中)
分布 インド太平洋(パキスタン、インド、東南アジア、ニューギニア、台湾など)
IUCNレッドリスト 準絶滅危惧(NT)
危険度 ★☆☆☆☆(1:非常に小さく、人に危害は加えない)

形態:サンゴ礁に溶け込む芸術的な模様

サンゴトラザメの最大の特徴は、その美しい体色です。

  • 模様:灰褐色の地に、多数の黒い斑点と白い斑点が散りばめられ、場所によってはそれらが繋がって複雑なマーブル模様を描いています。この模様は、光と影が揺らめくサンゴ礁の隙間において完璧な保護色(カモフラージュ)となります。
  • 体型:体は非常に細長く、頭部はやや平らです。狭い岩やサンゴの隙間に入り込むために進化した形です。
  • 目:猫のように細長い瞳孔を持ち、暗い場所での視力に優れています。

生態:隙間のハンター

住処と行動

その名の通り、サンゴ礁の浅瀬を生活の場としています。日中はサンゴの枝の間や岩の割れ目に隠れてじっとしていますが、夜になると活動を開始します。 細長い体をくねらせて狭い隙間を器用に通り抜け、獲物を探します。胸びれと腹びれを使って海底を「歩く」ように移動することもあります。

食性

主に底生性の無脊椎動物(エビ、カニ)や、寝ている小魚を捕食します。口は小さいですが、鋭い歯を持っており、隙間に潜む獲物を捕らえるのに適しています。

繁殖:マーメイドの財布

卵生です。メスは一度に2個の卵を産み落とします。 卵は「卵鞘(らんしょう)」と呼ばれる丈夫な殻に包まれており、その形状から欧米では「マーメイドの財布(Mermaid’s Purse)」と呼ばれます。卵鞘の端には長い巻きひげがあり、これを海藻やサンゴに絡ませて流されないように固定します。孵化までには数ヶ月かかります。

人との関わり・危険性

非常に小型でおとなしいため、人に危害を加えることはありません。ダイバーが近づいても、隠れ家からじっとこちらの様子を伺っていることが多いです。

観賞魚としての人気

その美しさと丈夫さ、あまり大きくならない(60cm程度)手頃なサイズから、家庭用のアクアリウムで飼育されるサメ(ペットシャーク)として世界的に人気があります。水族館でも、サンゴ礁の環境を再現した水槽でよく展示されています。

保全状況

サンゴ礁の破壊や、観賞魚目的の乱獲の影響を受ける可能性があります。現在はIUCNレッドリストで「準絶滅危惧(NT)」とされ、生息環境の保全が求められています。

トリビア

  • 学名の意味:種小名の marmoratus は「大理石模様の(マーブル状の)」という意味で、その特徴的な体色を表しています。
  • 日本のトラザメとの違い:日本近海にいる「トラザメ」とは近縁ですが、サンゴトラザメの方がより熱帯性が強く、模様も細かくて鮮やかです。

まとめ

サンゴトラザメは、サンゴ礁の隙間に隠れて暮らす、小さくて美しいサメです。その愛らしい姿と生態は、サメが「怖い捕食者」だけでなく、「環境に適応した多様な生き物」であることを教えてくれます。

FAQ(よくある質問)

どこで見られますか?

フィリピンやインドネシアなど、熱帯アジアのサンゴ礁に生息しています。日本の水族館でも比較的よく飼育展示されています。

飼育は難しいですか?

サメの中では比較的飼育しやすい種類とされていますが、海水魚飼育の設備と知識、そして60cm以上に成長することを考慮した水槽サイズが必要です。

卵から生まれるのですか?

はい、卵生です。お母さんは卵の殻(卵鞘)を海藻などに産み付け、赤ちゃんはその中で育ってから孵化します。

参考文献・出典

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