カマヒレザメ(Sicklefin Weasel Shark)図鑑
「鎌(カマ)」のように湾曲したヒレが特徴。「ヒレトガリザメ科」という珍しいグループに属する、熱帯のサメです。
基本情報
| 和名 | カマヒレザメ(鎌鰭鮫) |
|---|---|
| 英名 | Sicklefin Weasel Shark |
| 学名 | Hemigaleus microstoma |
| 分類 | メジロザメ目 ヒレトガリザメ科 カマヒレザメ属 |
| 体長 | 約0.7〜1.1m(小型) |
| 生息域 | 大陸棚の海底付近(水深170m以浅) |
| 分布 | インド洋〜西太平洋の熱帯海域(東南アジア、オーストラリア北部など) |
| IUCNレッドリスト | 危急(VU) |
| 危険度 | ★☆☆☆☆(1:小型で危険はない) |
形態:鎌状のヒレ
カマヒレザメの最大の特徴は、そのヒレの形です。
- ヒレ:第二背びれ、腹びれ、臀びれなどが、後ろに向かって強く湾曲し、草を刈る「鎌(カマ)」のような形をしています。英名「Sicklefin(鎌ヒレ)」もこれに由来します。
- 口:口は非常に短く、アーチ状に曲がっています。
- 歯:上顎の歯は尖っていますが、下顎の歯は短く、獲物を噛み切るのに適しています。
- 体色:背側は淡い灰色〜青銅色で、腹側は白色です。ヒレの先端が白くなっていることがあります。
生態
タコ食のスペシャリスト
このサメは、特にタコなどの頭足類を好んで食べることが知られています(食性の9割以上が頭足類という報告もあります)。 短い口と鋭い歯は、海底に潜むタコを捕らえて食べるのに特化しています。
生息環境
熱帯の海の底近くを泳ぎ回っています。日本では見られませんが、東南アジアやオーストラリアの暖かい海に生息しています。
繁殖
胎生(胎盤形成型)。一度に2〜4匹程度の仔サメを産みます。妊娠期間は約6ヶ月と推定されています。
人との関わり・危険性
小型でおとなしく、深場にいることが多いため、人に危害を加えることはありません。
東南アジアなど一部の地域では、底引き網漁などで漁獲され、食用やフカヒレとして利用されています。 漁獲圧の影響を受けやすく、IUCNレッドリストでは「危急(VU)」に指定され、個体数の減少が懸念されています。
トリビア
- ヒレトガリザメ科:メジロザメ科に近いですが、噴水孔(目の後ろの穴)があることや、腸の構造(螺旋弁)が異なることなどで区別される、小さなグループです。
- 英名「Weasel Shark」:直訳すると「イタチザメ」になりますが、日本語のイタチザメ(Tiger Shark)とは全く別の種類です。Weasel(イタチ)のように細長い体型や顔つきから名付けられたと考えられます。
まとめ
カマヒレザメは、その名の通り鎌のようなヒレを持つ、ユニークな小型サメです。タコを偏食するグルメな一面や、独特の分類的地位など、知れば知るほど面白い特徴を持っています。
FAQ(よくある質問)
日本で見られますか?
いいえ。現在のところ日本近海での生息記録はありません。主に東南アジアやオーストラリアで見られます。
イタチザメと同じですか?
いいえ、全くの別種です。英名に「Weasel(イタチ)」とつきますが、危険な大型サメのイタチザメ(Tiger Shark)とは関係ありません。
何を食べていますか?
タコ類を非常に好んで食べます。イカや甲殻類を食べることもあります。