クロトガリザメ(Blacktip Shark)図鑑
ヒレ先が黒い、活動的な中型サメ。よく似た「ツマグロ」とは別種で、海面から回転ジャンプするダイナミックな習性で知られます。
基本情報
| 和名 | クロトガリザメ |
|---|---|
| 英名 | Blacktip Shark |
| 学名 | Carcharhinus limbatus |
| 分類 | メジロザメ目 メジロザメ科 メジロザメ属 |
| 体長 | 平均 1.5〜2.5m(最大2.8mの記録あり) |
| 体重 | 最大 120kg前後 |
| 生息域 | 熱帯〜亜熱帯の沿岸浅海域、サンゴ礁や汽水域にも侵入 |
| 分布 | 大西洋西部(アメリカ東岸〜ブラジル)、東部大西洋、インド洋〜太平洋の広範囲 |
| IUCNレッドリスト | 絶滅危惧II類(VU) ※2020年評価更新 |
| 危険度 | ★★★☆☆(3:注意すべき中〜大型サメ) |
形態
クロトガリザメはメジロザメ科の中型サメで、体は細長く流線型。最大の特徴は、胸びれ・背びれ・尾びれの先端が黒く染まっていることです。
- 体色:背側が灰褐色〜青灰色で、腹側は白色。
- 歯:鋭い三角形の歯を持ち、魚類やイカを効率的に捕らえるのに適しています。
- ツマグロとの違い:よく似たツマグロ(Blacktip Reef Shark)は背びれの黒斑の周りが白く縁取られますが、クロトガリザメには白い縁取りがありません。また、クロトガリザメの方が大型で、より沖合を好みます。
生態
行動:ジャンプするサメ
非常に活動的で、沿岸の浅い海でスピンしながら水面から飛び出す(ブリーチング)行動がよく知られています。これは小魚の群れに突っ込んで捕食する際に見られる行動です。
食性
主にイワシ・サバなどの小魚を捕食。大群で小魚を追い込んで一斉に捕食する「フィーディングフレンジー」が観察されることもあります。イカや甲殻類も食べます。
繁殖
胎生(卵黄依存型)。春〜夏にかけて浅いラグーンや汽水域に移動し、1度に4〜10匹の仔を産みます。出産場所は「ナーサリー(保育場)」として機能し、仔ザメの成長を助けています。
人との関わり・危険性
クロトガリザメは人間に対して攻撃的ではありませんが、沿岸で人と接触する機会が多いため、サメ咬傷事故の一因とされています(濁った水中で手足を魚と誤認するなど)。国際的な統計では数十件の記録がありますが、致命的なものは少ないです。
漁業では食用やフカヒレ目的で漁獲されることが多く、乱獲による資源減少が懸念されています。最新のIUCN評価では「絶滅危惧II類(VU)」に分類され、保護の必要性が高まっています。
トリビア
- スポーツフィッシング:そのジャンプ力と引きの強さから、特にアメリカ(フロリダなど)では釣りの対象魚として人気があります。
- 名前の混乱:英名「Blacktip Shark」は直訳すると「黒い先端のサメ」ですが、日本で「ツマグロ」と呼ばれるサメ(Blacktip Reef Shark)とは別種です。
まとめ
クロトガリザメは、黒いヒレ先とダイナミックなジャンプが特徴的な中型のサメです。ツマグロと混同されやすいですが、より大型で活動的です。人との遭遇例も多く注意は必要ですが、その活発な生態は研究や観光資源としても重要な存在です。
FAQ(よくある質問)
Q1. クロトガリザメは人を襲いますか?
人間に対して積極的ではありませんが、沿岸の浅瀬で獲物を追っている際に、誤って人を噛む事故(誤認)の記録があります。
Q2. ツマグロ(ブラックチップリーフシャーク)と同じですか?
いいえ、別の種類です。クロトガリザメの方が大型で活動的です。ツマグロは背びれの黒斑の周りが白く縁取られているのが見分けるポイントです。
Q3. どこで見ることができますか?
温帯〜熱帯の沿岸域に広く分布しており、カリブ海、フロリダ沿岸、東南アジア、インド洋、太平洋の島々などで観察例があります。日本近海でも見られます。
Q4. どれくらい大きくなりますか?
平均で1.5〜2.5mほどですが、最大で2.8mに達する記録があります。体重は100kgを超えることもあります。
Q5. 保護の状況はどうなっていますか?
漁獲圧が高く資源量が減少しているため、IUCNでは「絶滅危惧II類(VU)」とされており、国際的にも保護の必要性が指摘されています。