ネコザメ

現生のサメ

ネコザメ(Japanese Bullhead Shark)

岩礁帯がんしょうたいや海藻域かいそういきを好む、夜行性やこうせいの底生ていせいサメ。らせん状の卵らんのう(卵しょう)で知られる。

形態

丸みのある頭部とうぶと短い吻ふん、発達した眉間びけん部が特徴。背びれは二基にきで各かく前方ぜんぽうにとげ(棘きょく)を持つ。体色たいしょくは黄褐色おうかっしょく〜灰色はいいろで、不規則な暗色あんしょくの帯状たいじょう・斑点はんてんが入る。口の歯列しれつは 前方ぜんぽうが小尖しょうせん歯、奥歯は臼状きゅうじょう(クラッシャー)で、貝・甲殻類こうかくるいをすりつぶすのに適している。胸びれ・腹びれは広く底生ていせい生活に向いた形。

生態・食性

夜行性やこうせいが強く、昼間は岩陰いわかげや海藻帯かいそうたいで休むことが多い。夕方〜夜間にかけて活動が上がり、貝類(巻き貝・二枚貝)・甲殻類(カニ・エビ)・ウニ類など殻こうをもつ底生ていせい生物を主食しゅしょくとする。嗅覚きゅうかく・触覚しょっかく的な探索たんさくと、臼歯きゅうしでの破砕はさいに優れる。遊泳ゆうえいは短距離たんきょりで、テリトリー内をのし歩くように動く。

行動

ナイトレンジ(夜間行動圏)をもつ個体が多く、定住性ていじゅうせいが比較的ひかくてき強い。単独またはゆるい小集団しょうしゅうだん。季節きせつにより浅場あさばとやや深場しんばを行き来する。俊敏しゅんびんさでは外洋型がいようがたに劣るが、狭い岩場での索餌さくじ能力は高い。

繁殖

卵生らんせい。雌めすはらせん状じょうの卵しょう(卵のう)を二個にこずつ産み、岩のすき間にねじ込むように固定していく。
産卵期さんらんきは地域差ちいきさがあるが春〜夏に多く、抱卵ほうらん数すう(シーズンの総計)は十数個〜数十個。
卵しょう内での発生はゆっくりで、ふ化ふかまで 7〜12か月程度ことが多い。ふ化直後の仔魚しいぎょは 15〜20cm 前後。性成熟せいせいじゅくは遅めで、寿命じゅみょうは数十年クラスと考えられている。

人との関わり・危険性

おとなしく、人に対する攻撃性こうげきせいは低い。背びれ前の棘きょくで不意にけがをする事例じれいがあるため、観察かんさつ・採捕さいほ時は手袋・慎重しんちょうな取り扱いが望ましい。沿岸えんがんの定置網ていちあみ・刺し網などで混獲こんかくされることがあるが、統計的とうけいてきな事故は稀まれサメの危険度としては低位で、適切てきせつな距離の保持ほじ・むやみに触れないといった基本ルールで十分じゅうぶんに安全あんぜんを確保かくほできる。

トリビア

  • 学名がくめい Heterodontus は「異いなる歯」の意い。前歯ぜんし(つかみ取り用)と奥歯おくば(すりつぶし用)がはっきり分化ぶんか。
  • らせん卵しょうは、波や流れでも岩の割れ目に固定されやすい“ねじ構造”。
  • 夜行性やこうせいのため、昼は動きが少ない。水族館すいぞくかんでは岩陰いわかげで休む姿が見られる。

まとめ

ネコザメは、殻こうを砕くだく臼歯きゅうしらせん卵しょうに象徴しょうちょうされる「底生ていせい×夜行性やこうせい」タイプ。沿岸えんがんの岩礁がんしょう・海藻帯かいそうたいにくらし、人とのトラブルは少ない。地域資源ちいきしげんとしての管理かんりや、生息地せいそくちの保全ほぜん(藻場そうば・岩礁帯がんしょうたいの良質化りょうしつか)が、種しゅの将来しょうらいにもつながる。

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FAQ(よくある質問)

どこに生息していますか?

日本列島を中心とする北西太平洋の沿岸えんがん〜浅海せんかい部。岩礁帯がんしょうたい・海藻域かいそういきを好みます。

何を食べますか?

巻き貝・二枚貝・カニ・エビ・ウニなど。臼歯きゅうしでかたい殻を砕くだくのが得意とくいです。

人に危険ですか?

基本的に臆病おくびょう・おとなしく、人への攻撃は稀まれです。背びれ前の棘きょくでの不意の負傷ふしょうに注意。

卵はどうやって産みますか?

らせん状じょうの卵しょうを二個にこずつ産み、岩のすき間にねじ込んで固定します。ふ化ふかまで長期間ちょうきかんかかります。

参考文献・出典

※本ページは教育・普及を目的として、図鑑てき情報を平易へいいにまとめています。採捕さいほ・接触せっしょく・飼育しいく等等は各地域の法令・指針ししんをご確認ください。

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