ウチワシュモクザメ(Bonnethead)

ウチワシュモクザメ(Bonnethead)図鑑

頭が「ウチワ」のような形をした、小型のかわいいハンマーヘッド。なんと「海草」を食べて栄養にする、世界初の雑食性サメとして注目されています。

基本情報

和名 ウチワシュモクザメ(団扇撞木鮫)
英名 Bonnethead / Shovelhead
学名 Sphyrna tiburo
分類 メジロザメ目 シュモクザメ科 シュモクザメ属
体長 0.8〜1.2m(最大1.5m程度の小型種)
体重 10kg前後
生息域 沿岸の浅瀬、干潟、海草藻場(水深10〜25m)
分布 アメリカ大陸沿岸の熱帯〜亜熱帯海域(大西洋、太平洋東部)
IUCNレッドリスト 絶滅危惧(EN)
危険度 ★☆☆☆☆(1:小型でおとなしい)

形態:スコップ型の頭

シュモクザメの仲間ですが、頭の形が独特です。

  • 頭部:横に張り出したハンマー型ではなく、丸みを帯びた「ウチワ(スコップ)」のような形をしています。英名「Bonnethead(ボネット帽のような頭)」や「Shovelhead(シャベル頭)」もこの形に由来します。
  • サイズ:シュモクザメ類の中では最小クラスで、成長しても1mそこそこです。

生態:まさかの「草食系」?

世界初の発見

2018年の研究で、ウチワシュモクザメが「海草(アマモなど)」を大量に食べ、しかもそれを消化して栄養にしていることが判明しました。 これまでサメは完全な肉食動物だと考えられてきましたが、本種は植物も食べる「雑食性」を持つことが科学的に証明された、世界初のサメです。

食性

もちろん肉も食べます。好物はカニやエビなどの甲殻類で、硬い殻を噛み砕くための臼歯を持っています。海草の茂みでカニを探すうちに、海草も一緒に(あるいは意図的に)食べていると考えられています。食性の最大60%が海草だったという記録もあります。

繁殖

胎生(胎盤形成型)。一度に4〜12匹の仔サメを産みます。妊娠期間は短く、4〜5ヶ月程度です。

人との関わり・危険性

小型で性格も温和なため、人に危害を加えることはありません。 アメリカの水族館では非常にポピュラーな飼育種で、群れで泳ぐ愛らしい姿が人気です。 日本でも稀に水族館に輸入・展示されることがあります。

沿岸の浅瀬に生息するため、開発による海草藻場の減少や、漁業の影響を強く受けており、IUCNでは「絶滅危惧(EN)」に指定されています。

トリビア

  • 単為生殖:2001年、アメリカの動物園で、メスだけで子供を産む「単為生殖(処女懐胎)」がサメとして初めて確認されたのが本種です。
  • 社会性:性別ごとに分かれた群れを作り、複雑な社会行動をとることが知られています。

まとめ

ウチワシュモクザメは、頭の形も食性もユニークな、常識破りのサメです。「サメ=肉食」というイメージを覆し、海草を食べる能力を身につけた進化の不思議。その小さな体には、驚くべき生存戦略が詰まっています。

FAQ(よくある質問)

本当に草を食べるのですか?

はい。胃の内容物から海草が見つかるだけでなく、特別な酵素を持っており、植物を消化・吸収できることが確認されています。

人を襲いますか?

いいえ。非常に小さくおとなしいため、人を襲うことはありません。

どこで見られますか?

アメリカ大陸沿岸(フロリダ、カリブ海、ブラジルなど)に生息しています。日本の海にはいません。

参考文献・出典

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