コバンザメ、チョウザメ、ノコギリエイ…。名前に「サメ」とついたり、サメのような見た目をしていたりしても、実は生物学的には全く別のグループである魚たちがいます。彼らの正体と、本物のサメとの違いを解説します。
1. コバンザメ(Remora)
正体:スズキ目 コバンザメ科(硬骨魚類)
水族館でジンベエザメやウミガメのお腹にくっついている姿でおなじみです。
- なぜサメと呼ばれる? サメにくっついて生活していることや、体型が少しサメに似ていることから名付けられましたが、実は「スズキ(鱸)」や「アジ」に近い仲間です。
- サメとの違い:
- 骨:サメは軟骨魚類ですが、コバンザメは硬い骨を持つ硬骨魚類です。
- 吸盤:頭の上に小判型の吸盤(背びれが変化したもの)があります。
2. チョウザメ(Sturgeon)
正体:チョウザメ目 チョウザメ科(古代魚/硬骨魚類)
高級食材「キャビア」の親として有名です。
- なぜサメと呼ばれる? 体の形がサメに似ており、背中のウロコが「蝶(チョウ)」の形をしていることから「蝶鮫」と名付けられました。
- サメとの違い:
- 口:サメの口は三日月型ですが、チョウザメは下に突き出た筒のような口と、ヒゲを持っています。
- 歴史:シーラカンスと同じく「生きた化石」と呼ばれる古代魚のグループで、サメとは進化の系統が全く異なります。
3. ノコギリエイ(Sawfish)
正体:ノコギリエイ目(軟骨魚類/エイの仲間)
ノコギリザメと最も間違われやすい生き物です。どちらも吻(口先)がノコギリ状になっています。
- サメとの違い(見分け方):
- エラの位置:サメは体の「側面(横)」にありますが、エイであるノコギリエイは体の「腹面(下)」にあります。
- サイズ:ノコギリザメは最大1.5m程度ですが、ノコギリエイは最大7mにもなる巨大魚です。
4. その他の「サメじゃない」生き物
他にも、名前にサメがついたり、混同されやすい生き物がいます。
- サメハダカ(鮫裸)
- 深海に住むハダカイワシの仲間の小型魚です。体表がザラザラしているためこの名前がつきましたが、サメとは無関係です。
- イルカザメ(鯆鮫)
- 日本で古くから使われてきた俗称で、実際はサメではなく「シイラ(マヒマヒ)」などの魚や、クジラの仲間(イルカ)を指すことがあります。地域によってはシイラの干物をイルカザメと呼ぶこともあります。
- サメハダホウズキイカ
- 深海に住むイカの仲間。皮膚がサメ肌のようにザラザラしていることから名付けられました。
- サメビタキ
- 鳥類(ヒタキ科)。体色がサメのような灰色であることに由来します。
まとめ:名前に騙されないで!
「〜ザメ」という名前は、単に「サメに似ている」「サメ肌である」という理由だけで付けられることがよくあります。
本当のサメ(サメ目)は、「エラが体の横にある」「骨が軟骨でできている」という特徴を持っています。水族館で「〜ザメ」という名前の魚を見つけたら、エラの位置を観察してみると、本物のサメかどうかが分かりますよ。