ジンベエザメはどこまで泳ぐ?1頭を約10年追跡したら地球1周以上を移動していた

ジンベエザメはどこまで泳ぐ?約5万5,000kmを移動したMilo

世界最大の魚、 ジンベエザメ は、いったい一生のうちにどれほどの距離を泳ぐのでしょうか。

その疑問を考えるうえで、 非常に貴重な記録を残している1頭がいます。

名前は「Milo(マイロ)」。

全長約8mのオスのジンベエザメで、 メキシコ・ユカタン半島沖で2017年に初めて衛星タグを装着されました。

研究チームはその後も同じMiloを見つけ、 2018年、2020年、2023年、 そして2026年7月にもタグを装着。

約10年間で計5回、同じジンベエザメを繰り返し追跡する という異例の研究になりました。

これまでに記録された移動距離は、 3万4,000マイル超、約5万4,700km。

地球一周がおよそ4万kmなので、 記録された移動距離だけでも地球一周を大きく超えています。

しかもMiloは、ただひたすら遠くへ泳いだわけではありません。

数千km規模の大移動をする一方で、 数カ月にわたって狭い海域に滞在したり、 ユカタン半島沖の餌場へ繰り返し戻ったりしていました。

Miloの記録から見えてきたのは、 「ジンベエザメ=ひたすら海を放浪する魚」 という単純な姿ではありません。

管理者(父)のひとこと

5万5,000kmという数字だけでも十分おかしいのですが、 個人的には「そんなに泳いでおいて、またユカタンへ戻ってくる」 という方が面白いです。 ものすごい放浪者なのに、行きつけの店は決まっている。

息子コメント

地球一周より泳いでるのに、 また同じ場所に戻れるのすごくない? どうやって場所覚えてるんだろう。

先に結論: 雄のジンベエザメ「Milo」は、 2017年から2026年までに5回衛星タグを装着され、 3,400日を超える期間に記録された移動距離は 3万4,000マイル超(約5万4,700km)に達しました。 ただし、1個のタグで約10年間連続して追跡したのではなく、 同じ個体を繰り返し発見して再度タグ付けした記録です。

1. Miloとはどんなジンベエザメ?

Miloは、 メキシコのユカタン半島周辺で研究されている 雄の ジンベエザメ です。

名前 Milo
種類 ジンベエザメ
学名 Rhincodon typus
性別 オス
大きさ 約8m
成長段階 大型の亜成体と研究者が説明
最初のタグ付け 2017年
タグ付け回数 計5回
記録期間 3,400日超
記録された移動距離 3万4,000マイル超(約5万4,700km)

研究を行っているのは、 Guy Harvey Foundation、 Nova Southeastern Universityの Guy Harvey Research Institute、 メキシコの保全団体Ch’ooj Ajauil AC、 University of Rhode Islandなどの研究チームです。

2. 2017年から5回、同じMiloをタグ付け

Miloが最初に衛星タグを装着されたのは2017年です。

ただし、この最初のタグからデータが送られたのは わずか数週間でした。

当時は研究チームも、 ジンベエザメにタグを取り付ける方法を改良している途中でした。

普通なら、タグが停止すればそこで追跡終了です。

ところが研究者たちはその後、 ユカタン沖へ戻ってきたMiloを再び発見しました。

そして新しい衛星タグを装着。 これを何度も繰り返しました。

年 Miloへのタグ付け
2017年 初めて衛星タグを装着
2018年 2回目
2020年 3回目
2023年 4回目
2026年7月 5回目

その結果、 同一個体について約10年にわたる移動情報を つなげることができました。

重要: 「約10年間追跡」といっても、 2017年から2026年までMiloの位置を 1秒も途切れず記録したわけではありません。 5回の衛星タグによる移動記録をつないだ長期追跡です。

3. どうして同じジンベエザメだと分かる?

海の中で何年も経ってから再会して、 「これはMiloだ」と分かるのも不思議です。

その大きな手がかりになるのが、 ジンベエザメの白い斑点模様です。

ジンベエザメの斑点模様は個体ごとに異なります。

人間の指紋のように個体識別へ利用でき、 背びれの形などの特徴と組み合わせることで、 過去に確認された個体と照合できます。

Miloもこうした特徴によって 同じ個体だと確認され、 繰り返しタグを取り付けることが可能になりました。

4. 約5万5,000km、どこまで泳いだ?

5回のタグから記録されたMiloの移動距離は、 3万4,000マイル以上。

キロメートルにすると約5万4,700kmです。

地球一周の距離がおよそ4万kmなので、 単純な距離としては 地球を一周してもまだ余るほどです。

Miloの移動はユカタン周辺だけにとどまりませんでした。

  • メキシコ湾を広く移動
  • カリブ海北部の島々の周辺を移動
  • バミューダより東の大西洋へ進出
  • 北はアメリカ・マサチューセッツ沖まで移動

ジンベエザメが、 沿岸だけでなく広大な外洋も利用することがよく分かります。

ただし約5万4,700kmは、 衛星タグから記録された位置情報をもとにした移動距離です。

海中で行ったすべての細かな移動を 完全に積算した「実際に泳いだ総距離」ではありません。

本当の遊泳距離は、 記録された移動距離以上である可能性があります。

5. 衛星タグはどうやってジンベエザメを追跡する?

Miloに使われているのは、 背びれに取り付ける衛星タグです。

このタイプのタグは、 ジンベエザメの背びれが海面から出たときに 衛星へ位置情報を送信します。

つまり、 海中を泳いでいる間ずっとGPSで追い続けているわけではありません。

背びれが海面へ出たタイミングで得られた位置情報をつなぎ、 サメの移動経路を調べます。

そのため衛星タグの地図を見ると、 サメの移動が線として表示されますが、 これはサメの一挙手一投足を完全に記録した軌跡ではありません。

それでも数カ月、数年という長い期間で位置情報を集めれば、 どの海域を利用するのか、 どこへ繰り返し戻るのかといった 大きな移動パターンが見えてきます。

6. Miloは遠くへ泳ぐ一方、数カ月ほとんど動かないことも

Miloの記録で面白いのは、 「とにかく長距離を泳ぐサメだった」 というだけではありません。

大西洋を大きく移動する時期がある一方で、 比較的狭い海域に数カ月滞在する ことも確認されました。

Guy Harvey Research InstituteのMahmood Shivji博士は、 Miloの記録について、 ジンベエザメが非常に遠くまで移動する能力を持ちながら、 条件の良い小さな海域に長期間とどまる柔軟性も示していると説明しています。

つまりジンベエザメは、 常に外洋を移動し続けているわけではありません。

必要に応じて、 長距離回遊と局所的な滞在を使い分けている と考えられます。

7. なぜMiloはユカタン沖へ何度も戻る?

Miloを長期間追跡できた最大の理由のひとつが、 ユカタン半島沖へ繰り返し戻ってきたことです。

この海域では毎年夏になると、 多数のジンベエザメやマンタが集まります。

その理由は「食べ物」です。

夏のユカタン沖では、 魚の卵や仔魚などが海面付近に大量に集まります。

世界最大の魚であるジンベエザメですが、 主に食べるのはプランクトンや魚卵、 小さな生物です。

巨大な口から海水を取り込み、 餌をこし取って食べます。

ユカタン沖は、 そんなジンベエザメにとって 季節限定の巨大な「食事場所」になるのです。

Miloが長距離を移動したあともこの海域へ戻ることは、 特定の重要な餌場を繰り返し利用する可能性 を示しています。

8. ジンベエザメはどうやって同じ場所へ戻れる?

ここで当然、 「広大な海からどうやってユカタンへ戻れるの?」 という疑問が出てきます。

残念ながら、 Miloがどんな感覚を使ってユカタン沖へ戻っているのかは、 今回の追跡だけでは分かりません。

サメには、 視覚、嗅覚、聴覚、側線、 ロレンチーニ器官による電気感覚など、 さまざまな感覚があります。

また海流、水温、地磁気などが 長距離移動の手がかりになる可能性も研究されています。

しかし、 Miloが具体的に何を目印にユカタンへ戻ったのかは未解明 です。

「5万km以上移動した」ことは分かっても、 「どうやって道を覚えているのか」はまだ分からない。

サメ研究、こういうところで容赦なく次の謎を置いていきます。

9. 「世界最長のサメ追跡記録」は本当?

Guy Harvey Foundationは今回、 Miloのデータについて サメの移動を記録した最長の記録 と発表しています。

ただし、 「最長」を単純な移動距離の意味で受け取る場合には注意が必要です。

同じGuy Harvey Research Instituteは2018年、 「Andy」というイタチザメについて、 1,240日以上で 約3万7,565マイルを移動したと報告しています。

これはMiloの現在公表されている 3万4,000マイルを上回ります。

そのため、 Miloについて 「史上最も長い距離を泳いだサメ」 と断定するのは避けた方が正確です。

Miloの記録で特に異例なのは、 同じ個体を繰り返し発見して5回タグ付けし、 約10年、3,400日を超える期間の行動を追っていることです。

本記事での扱い: 研究チームはMiloについて「サメの最長移動記録」と発表していますが、 過去にはより長い累積移動距離が報告されたサメもいます。 そのため本記事では、 Miloをサメ類で最長クラスの長期追跡記録として紹介しています。

10. 約10年追跡する意味は「距離」だけではない

Miloの研究で本当に重要なのは、 5万kmという派手な数字だけではありません。

1頭のサメを長期間調べることで、 1年だけの調査では分からない行動が見えてきます。

  • 毎年同じ場所へ戻るのか
  • 年によって移動ルートが変わるのか
  • どの海域で長く滞在するのか
  • 季節と移動に関係があるのか
  • 餌が豊富な場所を繰り返し利用するのか

例えば1年間だけ追跡して、 その年にMiloが遠くへ移動していれば、 「ジンベエザメは常に大移動する魚」 と考えてしまうかもしれません。

しかし約10年の記録を見ると、 遠くへ移動する時期と、 同じ場所に長く滞在する時期の両方があります。

長期追跡だからこそ、 ジンベエザメの生活が 単純な「放浪」ではないことが見えてきたのです。

11. ジンベエザメの回遊を調べることが保全につながる

ジンベエザメは現在、 絶滅が心配されているサメのひとつです。

大型の体で海面近くを泳ぎながら餌を食べるため、 船舶との衝突も大きな問題になっています。

また、1頭のジンベエザメが 複数の国や広大な外洋を利用するとなれば、 1つの国だけで守れば済む生きものではありません。

どの海域を通るのか、 どこで長期間過ごすのか、 どの餌場へ繰り返し戻るのかが分かれば、 保全上重要な海域や移動ルートを考える材料になります。

特に船の航路と ジンベエザメの移動経路が重なる場所が分かれば、 船舶衝突のリスクを減らすための対策にもつながる可能性があります。

12. Miloの旅から分かったジンベエザメの生態

Miloの約10年間の記録から見えてきたのは、 ジンベエザメの非常に柔軟な移動戦略です。

観察された行動 分かること
数千km規模の長距離移動 広大な外洋を利用できる
数カ月間狭い海域に滞在 常に回遊し続けるわけではない
ユカタン沖へ繰り返し回帰 重要な餌場を繰り返し利用する可能性
沿岸と外洋の両方を利用 非常に異なる環境を使い分けられる

「巨大なサメが世界の海をさまよっている」 というイメージだけでは、 ジンベエザメの本当の生活は説明できません。

遠くへ行く能力を持ちながら、 条件の良い場所へ何度も戻る。

Miloは、 そんなジンベエザメの行動の柔軟さを 長期間にわたって見せてくれた個体なのです。

まとめ:5万5,000kmより面白い「戻ってくる」という事実

雄のジンベエザメMiloは、 2017年から2026年までに計5回衛星タグを装着されました。

  • 全長約8mの雄のジンベエザメ
  • 2017年から2026年まで5回タグ付け
  • 記録期間は3,400日超
  • 記録された移動距離は3万4,000マイル超
  • 約5万4,700kmで地球一周を超える距離
  • メキシコ湾からカリブ海、大西洋、マサチューセッツ沖まで移動
  • 一方で数カ月間、狭い海域へ滞在することもある
  • ユカタン半島沖の季節的な餌場へ繰り返し戻っている

5万5,000kmという数字は確かに強烈です。

しかし、この研究でさらに興味深いのは、 それだけ遠くへ移動できるジンベエザメが、 同じ場所へ何度も戻ってくることです。

長距離を移動する能力と、 特定の海域を繰り返し利用する性質。

約10年間にわたって同じ1頭を追い続けたからこそ、 その両方を見ることができました。

Miloの旅は、ジンベエザメの回遊が 単なる「長距離旅行」ではないことを教えてくれています。

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FAQ(よくある質問)

ジンベエザメはどれくらいの距離を泳ぐのですか?

個体によって異なります。 雄のジンベエザメMiloでは、 2017年から2026年までの5回の衛星タグによって、 3万4,000マイル超、約5万4,700kmの移動が記録されています。 ただし、これはジンベエザメ全体の平均移動距離を示す数字ではありません。

Miloは10年間ずっと衛星で追跡されていたのですか?

いいえ。 Miloは2017年、2018年、2020年、2023年、2026年の計5回タグ付けされています。 それぞれのタグによるデータをつなぐことで、 約10年間にわたる同一個体の行動記録が得られました。

なぜ同じMiloだと分かるのですか?

ジンベエザメの白い斑点模様は個体ごとに異なり、 個体識別に利用できます。 背びれの形などの特徴も組み合わせることで、 同じ個体を再確認できます。

衛星タグはどうやって位置を調べるのですか?

背びれに取り付けた衛星タグが海面から出た際に、 衛星へ位置情報を送信します。 そのため、海中を泳いでいるすべての瞬間を GPSで連続記録しているわけではありません。

Miloはなぜユカタン半島へ戻るのですか?

ユカタン半島沖では夏になると魚卵や仔魚などが豊富になり、 多くのジンベエザメやマンタが集まります。 Miloもこの季節的な餌場を繰り返し利用していると考えられます。 ただし、Milo自身が何を手がかりに戻っているかは分かっていません。

Miloは世界で最も長い距離を泳いだサメですか?

研究チームはMiloのデータをサメの最長移動記録と発表していますが、 過去にはイタチザメ「Andy」で約3万7,565マイルという より長い累積移動距離も報告されています。 Miloの特に重要な点は、 同じ個体を5回タグ付けし、 約10年・3,400日超にわたる長期的な移動を追跡できたことです。

ジンベエザメはずっと泳ぎ続けているのですか?

長距離を移動する一方、 Miloでは比較的狭い海域に数カ月滞在する行動も確認されています。 ジンベエザメは長距離回遊と局所的な滞在の両方を行うことがあります。

参考文献・出典

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