サメの耳はどこにある?聴覚の仕組みと74m先の音が聞こえる最新研究

サメに耳はある?実は遠くの音まで聞こえている

サメの顔を見ても、人間のような耳は見当たりません。 では、サメは音が聞こえないのでしょうか?

実は、サメにも耳があります。 ただし、人間のような耳たぶや外耳道はなく、 頭の内部にある内耳で水中の音や振動を感じ取っています。

2026年には、野生の カマストガリザメ(Blacktip Shark) が、最大約74m離れた水中スピーカーの音に反応し、 音源から離れる方向へ泳ぐ向きを変えたことが報告されました。

この研究は、自由に泳ぐサメが遠くの音を感知し、 音の来る方向を判断できることを、 距離と行動の両面から定量的に示した重要な成果です。

今回は、サメの耳の位置から、 聞こえる音の種類、最新の74m実験、 そしてロレンチーニ器官や側線との違いまで解説します。

アイキャッチでは、水中スピーカーから伝わる音、 サメの内耳、ドローンによる観測を模式的に表現しています。 内耳の構造や配置は説明用のイメージであり、 実際の解剖学的な縮尺を再現したものではありません。

先に結論: サメには頭の内部に左右一対の内耳があり、 特に低い周波数の水中音や振動を感知します。 2026年の研究では、野生のカマストガリザメが 最大74m離れた音に反応し、音源を避けるように方向転換しました。 ただし74mは今回の実験で確認された距離であり、 すべてのサメの聴覚限界を示す数字ではありません。

1. サメの耳はどこにある?

サメの耳は、目の後ろから頭の上部にかけて、 頭蓋の内部に左右一対存在します。

人間のように外へ突き出した耳はありませんが、 頭の上面には内リンパ孔と呼ばれる 非常に小さな穴があります。

内リンパ孔は内リンパ管を通じて内耳につながっています。 種類によって位置や見え方は異なり、 外から簡単に確認できない場合もあります。

サメの耳の特徴

耳の位置 頭の内部、目の後方付近
耳たぶ なし
外耳・中耳 人間のような構造は持たない
主な器官 内耳
外から見える目印 頭の上面にある小さな内リンパ孔
主な役割 音・振動の感知と平衡感覚

なお、内リンパ孔は人間の耳の穴と同じ構造ではありません。 耳につながる小さな開口部であり、 音を集める耳たぶのようなものでもありません。

2. サメはどうやって水中の音を聞くの?

サメの内耳には、液体で満たされた構造と、 動きを感じ取る有毛細胞があります。

有毛細胞とは、名前の通り、 細い毛のような突起を持った感覚細胞です。

水中を伝わる音や振動によって、 内耳の感覚器官に微小な動きが生じると、 有毛細胞がそれを神経信号へ変換します。

その信号が脳へ伝わることで、 サメは周囲で起きていることを感知します。

音を聞くだけでなく、体の傾きも分かる

サメの内耳には、音の感知に加えて、 体の向きや姿勢を知る役割もあります。

例えば、上下左右へ泳ぎながら姿勢を保ったり、 方向を変えたりするときにも、 内耳の平衡感覚が役立ちます。

私たちの内耳にも平衡感覚を担う構造があります。 サメの耳は見た目こそ違いますが、 音と体の動きを感じ取るという重要な働きを持っています。

3. サメは何Hzまで聞こえる?

サメは一般に、 低い周波数の音に敏感だと知られています。

周波数はHz(ヘルツ)という単位で表され、 1秒間に振動する回数を意味します。

  • 100Hz:1秒間に100回振動する音
  • 500Hz:1秒間に500回振動する音
  • 1,000Hz:1秒間に1,000回振動する音

数字が小さいほど低い音、 大きいほど高い音になります。

過去のサメやエイの聴覚研究では、 おおむね20〜1,500Hz程度の音への反応が報告されており、 25〜200Hz付近で感度が高い例が知られています。

ただし、聞こえる範囲は種類や実験方法によって異なります。 すべてのサメが同じ周波数まで聞こえるわけではありません。

覚えておきたいこと: 「サメは1,500Hzまでしか聞こえない」 といった一律の上限を決めることはできません。 聴覚の範囲や感度は、種ごとに調べる必要があります。

4. 2026年の研究:野生のサメが74m先の音を感知

2026年6月30日、科学誌 Integrative Organismal Biologyに、 サメの聴覚に関する研究論文が公開されました。

研究を行ったのは、 アメリカのFlorida Atlantic University(FAU)の研究チームです。

大学は同年9月24日、 この研究成果を公式に紹介しました。

研究対象は、フロリダ州パームビーチ郡沿岸を泳ぐ カマストガリザメ(Carcharhinus limbatus)です。

カマストガリザメは、 英名をBlacktip Sharkといい、 ひれの先端に黒い模様を持つ沿岸性のサメです。

フロリダ南東部では季節的に多くの個体が沿岸へ集まるため、 野生個体を観察する条件が整っています。

詳しい特徴や生態は、 カマストガリザメ図鑑 でも紹介しています。

研究の概要

研究機関 Florida Atlantic University
対象種 カマストガリザメ
学名 Carcharhinus limbatus
場所 米国フロリダ州パームビーチ郡沿岸
方法 水中スピーカーと空撮ドローン
最大反応距離 74m
論文公開 2026年6月30日
大学による研究紹介 2026年9月24日

5. 実験方法:水中スピーカーとドローンで観察

研究者たちはフロリダの浅い沿岸海域に船を停泊させ、 水中スピーカーを設置しました。

スピーカーは船そのものの影響を減らすため、 船から離れた位置に配置しています。

さらに海面から約40〜50mの高さでドローンを飛ばし、 自由に泳ぐサメの動きを上空から撮影しました。

サメが音を聞いて進路を変えた瞬間を映像で確認し、 スピーカーからの距離や方向転換の角度を測定したのです。

再生した4種類の音

周波数 実験での役割 結果
100〜200Hz 低周波音 反応あり
200〜400Hz 低周波音 反応あり
400〜800Hz 比較的高い実験音 反応あり
10,000Hz(10kHz) 比較用の対照音 明確な行動反応なし

研究チームは、 サメの既知の聴覚範囲外にある10kHzの音を比較用に使いました。

サメがスピーカーや船の存在そのものに反応しているのであれば、 周波数に関係なく反応が起きる可能性があります。

しかし実際には、 3種類の低周波音では反応した一方、 10kHzの対照音では明確な反応が確認されませんでした。

この結果は、 サメが実験で与えられた低周波音に反応していたことを 裏付けています。

6. サメは音の方向まで判断できた

今回の研究で特に注目されたのは、 単に音を感じたことだけではありません。

サメは音が再生されると、 20〜160度の急激な方向転換を行い、 スピーカーから離れる方向へ素早く泳ぎました。

つまり、ただ驚いて動いたのではなく、 音源のある方向を判断し、 そこから離れるような行動を取ったと考えられます。

このような行動は、 音が聞こえていることに加え、 音の方向に関する情報も利用できていることを示します。

音に引き寄せられたわけではない

ここは誤解しやすいポイントです。

今回の研究では、 サメが音を聞いて近寄ってきたわけではありません。

研究者はサメを誘引するためではなく、 驚愕反応を起こす目的で比較的強い音を再生しました。

そのため、サメは音源に向かうのではなく、 音源から離れる反応を示したのです。

今回の結果だけから、 「サメは音を嫌う」 「スピーカーを置けばサメを追い払える」 と結論づけることはできません。

音の種類や大きさ、再生方法によって、 サメの反応は変わる可能性があります。

7. 74mという距離は、どれくらいすごい?

実験では、カマストガリザメが 最大74m離れた場所から低周波音に反応しました。

また、3種類の実験音すべてについて、 少なくとも62m離れた位置からの反応が確認されています。

約74mといえば、 25mプールをほぼ3つ並べた長さです。

水中では、遠くの音が目に見えるわけではありません。 それでもサメは、音の存在を感知し、 音源から離れる方向へ進路を変えました。

74mがサメの聴覚の限界という意味ではない

今回の74mは、 実験条件下で確認できた最大の反応距離です。

すべてのサメが必ず74m先の音を聞けるという意味でも、 74mより遠くの音を聞けないという意味でもありません。

音の強さ、周波数、周囲の騒音、 海底や水面による音の反射、 サメの種類などによって結果は変わります。

研究の正しい読み方: 「サメの聴覚は74mまで」と決まったのではなく、 野生で泳ぐカマストガリザメについて、 少なくとも74m離れた音への反応を確認できた ことが重要です。

8. なぜ「遠方場(far field)」での反応が重要なの?

音は、水の中を振動として伝わります。

水中音には、 水圧の変化である音圧と、 水の粒子の動きである粒子運動という側面があります。

音源に近い場所は「近接場(near field)」、 十分離れた場所は「遠方場(far field)」と呼ばれます。

近接場では音源の近くに特有の粒子運動があり、 遠方場では音波として伝わる音圧と粒子運動の関係が変わります。

従来、サメが遠方場でどれほど音を感知し、 その方向を判断できるかについては、 定量的な行動データが十分ではありませんでした。

今回の研究では、 全209件の反応のうち71.6%が遠方場で起きた ことが示されました。

つまり、音源のすぐ近くで振動に反応しただけではなく、 音響学的に遠い領域でも反応したということです。

研究チームは、 サメが遠方場でも音に伴う粒子運動を感知している可能性を指摘しています。

ただし、今回測定されたのは主に音圧と行動反応です。 内耳のどの構造が遠方場の粒子運動を感知したのかまで、 直接証明されたわけではありません。

9. サメは浮き袋がないのに、なぜ音が聞こえる?

多くの硬骨魚には、 体内にガスが入った浮き袋があります。

浮き袋は浮力の調節だけでなく、 種類によっては音圧による振動を内耳へ伝える仕組みにも関係します。

一方、サメは軟骨魚類であり、 ガスを満たした浮き袋を持っていません。

それでもサメは、 水中音に伴う粒子運動を内耳で感じ取ることができます。

注目される「マクラ・ネグレクタ」

研究チームが注目しているのが、 内耳にあるマクラ・ネグレクタ(macula neglecta) という感覚領域です。

この構造には有毛細胞があり、 音や振動の感知に関係すると考えられています。

とくにメジロザメ科では、 この感覚領域が発達している種類が知られています。

研究チームは、 カマストガリザメが遠方場でも低周波音を感知できた背景に、 こうした内耳の特殊な構造が関係している可能性を挙げています。

ただし、 今回の実験だけでマクラ・ネグレクタが 74m先の音を検知したと直接証明されたわけではありません。

具体的な感知の仕組みについては、 今後の研究課題となっています。

10. 音を聞く耳と、振動を感じる側線は何が違う?

サメには、内耳以外にも 水の動きを感じる感覚器官があります。

それが側線です。

側線は体の側面や頭部に分布する感覚器官で、 周囲の水流や局所的な水の動きを感知します。

例えば、近くを泳ぐ魚が水を動かしたとき、 その変化を感じることができます。

内耳と側線は、 どちらも有毛細胞を利用する機械感覚の仕組みですが、 主に扱う情報や役割が異なります。

器官 主な働き 役立つ場面
内耳 水中音・振動、平衡感覚 音の感知、方向判断、姿勢の維持
側線 周囲の水流や局所的な水の動き 近くの魚の動き、周囲の水流の変化

ただし、両者が感じる物理的な刺激には重なる部分もあります。 「耳は音だけ、側線は水流だけ」と、 完全に切り離せるわけではありません。

11. ロレンチーニ器官とは何が違う?

サメには、さらに特殊な感覚器官があります。

それがロレンチーニ器官です。

サメの鼻先や頭部に見える小さな穴につながる器官で、 水中の微弱な電気を感じ取ることができます。

生きものは筋肉などが活動するとき、 ごく弱い電気信号を生じます。

サメはそのような電気的な情報を、 獲物の位置を知る手がかりとして利用します。

サメの感覚器官を比較

感覚 器官 感じるもの
視覚 目 光、形、動き
嗅覚 鼻の嗅覚器官 水中に溶けた化学物質
聴覚 内耳 音に伴う振動・粒子運動
機械感覚 側線 水流や局所的な水の動き
電気感覚 ロレンチーニ器官 微弱な電場

サメは、これらの感覚を状況に応じて組み合わせています。

遠くの音を手がかりに周囲の変化を察知し、 獲物に近づくと視覚や嗅覚、 側線、電気感覚なども利用することができます。

サメの感覚を利用した狩りの仕組みについては、 サメは何を食べる?食性と狩りのテクニック でも紹介しています。

12. サメは音を聞いて獲物を探している?

過去の研究では、 弱った魚などが発する不規則な低周波音に、 サメが引き寄せられる例が知られています。

こうした音は、遠くにいる獲物や、 周囲で起きている出来事を知る手がかりになります。

しかし、音を感知したからといって、 必ずその方向へ近づくわけではありません。

今回の2026年の研究では、 強い音に対してサメは反対方向へ泳ぎました。

同じ聴覚でも、 音の性質や状況によって、 近づく・離れるなど異なる行動が起こり得るのです。

注意: サメの聴覚は、獲物を探すためだけのものではありません。 周囲の異変や危険を知る手がかりにもなり得ます。 今回の研究は、強い音に対する回避行動を観察したものです。

13. この研究はサメの保全にも役立つ?

サメが遠くの音を感知できることは、 生態研究だけでなく、 人間の海洋活動との関係を考えるうえでも重要です。

海には船舶や工事など、 人間の活動によって発生する水中音もあります。

こうした音にサメがどのように反応するかを理解することは、 将来的に海洋環境や生息域の管理に役立つ可能性があります。

ただし今回の研究では、 船舶騒音や工事音がサメに与える長期的な影響を 直接調べたわけではありません。

また、音を使ったサメの誘引装置や忌避装置の有効性を 検証した研究でもありません。

研究成果を実際の保全や安全対策へ応用するには、 ほかのサメの種類や、さまざまな音の条件での検証が必要です。

まとめ:サメは耳が見えなくても、遠くの音を感じ取れる

サメには人間のような外耳はありませんが、 頭の内部に内耳があり、 特に低周波の音や振動を感じ取っています。

2026年のFlorida Atlantic Universityの研究では、 野生のカマストガリザメについて、 遠方場でも音を感知し、 音源の方向を判断できることが定量的に示されました。

  • サメには頭の内部に左右一対の内耳がある。
  • 特に低い周波数の水中音に敏感である。
  • 野生のカマストガリザメが最大74m離れた音に反応した。
  • 音に反応すると20〜160度の方向転換を行った。
  • 全209件の反応のうち71.6%が遠方場で起きた。
  • 今回の強い音に対しては、近づかずに離れる行動を示した。
  • 音の詳しい感知機構には、まだ研究の余地がある。

サメは耳が見えないからといって、 音のない世界で暮らしているわけではありません。

私たちには静かに見える海の中でも、 サメは水中を伝わるさまざまな情報を感じ取っています。

今回の研究は、サメが海の音をどのように利用しているのかを 理解するための新しい一歩となりました。

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FAQ(よくある質問)

サメに耳はありますか?

あります。人間のような耳たぶはありませんが、 頭の内部に左右一対の内耳があります。 音や振動を感じ取るほか、体の姿勢を保つ平衡感覚にも関係しています。

サメの耳はどこにありますか?

目の後ろ付近の頭蓋内部にあります。 頭の上面には、内耳へつながる小さな内リンパ孔が存在します。

サメは何m先まで音が聞こえますか?

2026年の研究では、野生のカマストガリザメが 最大74m離れた低周波音に反応しました。 ただし74mは今回の実験で確認された最大距離であり、 すべてのサメの聴覚の限界ではありません。

サメはどんな音が聞こえますか?

一般に低い周波数の音に敏感です。 2026年の研究では100〜800Hzの3種類の周波数帯で反応が確認されました。 聴覚の範囲は種類によって異なります。

サメは音の方向も分かりますか?

今回のカマストガリザメの研究では、 音が再生されると20〜160度の急旋回を行い、 音源から離れる方向へ泳ぎました。 この行動は、音源の方向に関する情報を利用できることを示しています。

サメは高い音が聞こえないのですか?

今回の実験では10kHzの対照音に明確な行動反応を示しませんでした。 ただし、この結果だけですべてのサメが高い音を一切感知できないと 断定することはできません。

サメは音を聞くと近づいてきますか?

音の種類や状況によります。 弱った魚が発するような低周波音に引き寄せられる例は知られていますが、 今回の実験では強い音を与えたため、 サメは音源から離れる反応を示しました。

サメの側線と耳は同じものですか?

別の感覚器官です。 内耳は音や振動、平衡感覚に関係し、 側線は周囲の水流や水の動きを感じ取ります。 どちらも有毛細胞を利用するという共通点があります。

参考文献・出典

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