ハステリス図鑑
現代の海の王者「ホホジロザメ」。その起源はずっと謎に包まれていました。 メガロドンが祖先だと思われていた時期もありましたが、最新の研究が指し示した「真の祖先」がこのサメ、**カルカロドン・ハステリス**です。 かつては「アオザメの祖先」と考えられ、イスルス・ハステリス(Isurus hastalis)と呼ばれていましたが、化石の分析によりホホジロザメ属(カルカロドン)に分類が変更されつつある、進化史上の最重要種です。
基本情報
| 和名 | カルカロドン・ハステリス (旧名:オオアオザメ / イスルス・ハステリス) |
|---|---|
| 英名 | Broad-tooth Mako(広歯のアオザメ) |
| 学名 |
Carcharodon hastalis (または Cosmopolitodus hastalis) |
| 分類 | ネズミザメ目 ネズミザメ科 ホホジロザメ属(説) |
| 生きた時代 | 新生代 中新世〜鮮新世(約2000万〜300万年前) |
| 体長 | 約 5.0〜7.0m(最大級はホホジロザメを超える) |
| 生息域 | 世界中の海(コスモポリタンな分布) |
| 特徴 | 幅の広い三角形の歯、鋸歯(ギザギザ)がない |
形態:ギザギザのないホホジロザメ
最大の特徴「つるつるの歯」
現代のホホジロザメの歯には、肉を切り裂くための「鋸歯(きょし=ギザギザ)」が付いていますが、ハステリスの歯にはこのギザギザがありません(または極めて微弱です)。 歯の形自体は幅広の三角形でホホジロザメに似ていますが、縁がつるっとしているため、長らく「アオザメ(つるっとした歯を持つ)」の仲間だと誤解されていました。
巨大な体躯
最大全長は7メートル近くに達したと推測されており、現代のホホジロザメと同等か、それ以上に巨大でした。 当時の海には「メガロドン」も生息していましたが、ハステリスもまた、クジラやアザラシを襲う強力な捕食者としての地位を確立していました。
進化のドラマ:アオザメからホホジロザメへ?
名前が変わった理由
以前は「イスルス・ハステリス(アオザメ属のハステリス)」という学名が一般的で、和名も「オオアオザメ」と呼ばれていました。 しかし、2012年に「カルカロドン・ハッベリ(Carcharodon hubbelli)」という新種の化石が詳しく研究されたことで定説が覆ります。 ハッベリ種は「弱いギザギザ」を持っており、つるつるのハステリスから、ギザギザのホホジロザメへと進化する「途中経過」であることが分かったのです。 これにより、ハステリスはアオザメ属ではなく、ホホジロザメの直系の祖先(カルカロドン属、またはコスモポリトダス属)であると考えられるようになりました。
生態と動画
クジラを狩るハンター
世界中の地層から化石が見つかっており、非常に繁栄していたことが分かります。 小型のクジラやイルカ、海獣類を主食にしていました。アオザメのような高速遊泳能力と、ホホジロザメのようなパワーを兼ね備えていた可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q: 結局、アオザメなの?ホホジロザメなの?
A: 現代の分類では「ホホジロザメの祖先」とするのが主流です。かつては歯の形が似ているためアオザメの祖先(オオアオザメ)と呼ばれていましたが、現在はホホジロザメ属(Carcharodon)や、それに近いコスモポリトダス属(Cosmopolitodus)に分類されます。
Q: 日本でも化石は見つかりますか?
A: はい、日本各地で多数発見されています。埼玉県や千葉県など、かつて海だった場所の地層からは、ハステリスの鋭く大きな歯の化石がよく見つかり、化石ファンにも人気があります。
Q: なぜ歯にギザギザがないのですか?
A: 当初は魚やイカなどを突き刺して食べるのに適した「つるっとした歯(アオザメ型)」をしていました。その後、脂肪分の多いクジラなどを切り裂いて食べる生活に適応する過程で、徐々にギザギザを獲得していった(子孫がハッベリ、そしてホホジロザメになった)と考えられています。
まとめ
カルカロドン・ハステリスは、名前や分類が二転三転した「ややこしいサメ」ですが、それは彼らが進化の重要な鍵を握っている証拠でもあります。 アオザメのようなスマートさと、ホホジロザメの強さを併せ持っていた太古の支配者。 博物館で「オオアオザメ」というラベルを見かけたら、それは「ホホジロザメのおじいちゃん」のことかもしれません。
関連
参考文献・出典
- Wikipedia – Carcharodon hastalis
- Ehret, D. J., et al. (2012). “Origin of the white shark Carcharodon (Lamniformes: Lamnidae) based on recalibration of the Upper Neogene Pisco Formation of Peru”. Palaeontology.