エデスタス(Edestus)図鑑
上下の顎から「ハサミ」のように歯列が突き出した、奇妙な姿の古代魚。石炭紀の海を生きた、ヘリコプリオンの親戚です。
基本情報
| 和名 | エデスタス(剪定鋏鮫) |
|---|---|
| 英名 | Edestus / Scissor-tooth Shark |
| 学名 | Edestus sp. |
| 分類 | エウゲネオドゥス目 エデスタス科 エデスタス属(※サメよりギンザメに近い全頭類) |
| 体長 | 推定 3〜6m(最大種 E. heinrichi は6.7m説も) |
| 生息時代 | 石炭紀後期(約3億年前) |
| 生息域 | 当時の海(北米、イギリス、ロシアなどで化石発見) |
| 危険度 | —(絶滅種) |
形態
エデスタスの最大の特徴は、上下の顎から前方に湾曲して突き出した「歯列」です。
- 歯の構造:サメのように古い歯が抜け落ちるのではなく、新しい歯が古い歯を前へ前へと押し出し、一本の長い「歯の列」を形成します。
- ハサミのような顎:上下の歯列がまるで「剪定ばさみ(Scissor)」のように噛み合わさる構造をしています。
- 体型:化石は歯や顎の一部しか見つかっていませんが、近縁種から推測すると、流線型の体を持っていたと考えられます。
生態
食性:ハサミで切り裂く
この特殊な歯を使って、獲物を挟み込み、首を振って切り裂くように捕食していたと考えられています。硬い殻を持つ生物や、大型の魚類を襲っていた可能性があります。
分類:サメではない?
見た目はサメに似ていますが、分類学的にはサメ(板鰓類)ではなく、現在のギンザメに近い「全頭類(エウゲネオドゥス目)」の仲間です。
トリビア
- ヘリコプリオンとの違い:近縁種のヘリコプリオンは歯が「螺旋状(渦巻き)」に巻きますが、エデスタスは巻かずに「前方へ突き出し」ます。
- 英名の由来:その形状から「Scissor-tooth Shark(ハサミ歯のサメ)」とも呼ばれます。
- 巨大な種:最大の種である Edestus giganteus の歯列は長さ40cm以上あり、全長はホホジロザメを超えるサイズだったと推測されています。
まとめ
エデスタスは、口から飛び出した「ハサミのような歯」を持つ、石炭紀の異様な捕食者です。サメのようでありながらサメではない、進化の過程で生まれたユニークな古代魚として、古生物ファンの心を掴んで離しません。
FAQ(よくある質問)
Q1. 歯はどうなっていたのですか?
古い歯が抜け落ちず、新しい歯に押し出されて、上下の顎から前方へ弓なりに突き出していました。
Q2. 何を食べていましたか?
鋭い歯と顎の力で、当時の魚類や、硬い殻を持つ生物などを切り裂いて食べていたと考えられています。
Q3. どれくらい大きかったのですか?
種によって異なりますが、平均3〜6m。最大種は6.7mに達したという説もあり、現代のホホジロザメ並みの大きさです。
Q4. サメではないのですか?
はい。広い意味では「古代サメ」として扱われますが、分類上はサメ(板鰓類)ではなく、ギンザメに近い「全頭類」の仲間です。