ニシオンデンザメ

Somniosus microcephalus 深海のサメ / 現生のサメ

ニシオンデンザメ(Greenland Shark)図鑑

寿命400年以上?脊椎動物の中で最も長生きとされる深海の巨大ザメ。毒のある肉や、目に寄生虫がつく不思議な生態を解説します。

基本情報

和名 ニシオンデンザメ
英名 Greenland Shark
学名 Somniosus microcephalus
分類 ツノザメ目 オンデンザメ科 オンデンザメ属
体長 3〜6m(最大で7mを超える記録もある)
体重 400〜1000kg(大型個体は1.2t以上)
生息域 北大西洋・北極海の深海や冷水域(水深200〜1200mが多い)
分布 北極海〜北大西洋全域(カナダ、グリーンランド、アイスランド、ノルウェーなど)
IUCNレッドリスト 危急(VU)
危険度 ★☆☆☆☆(1:人に危険を及ぼす可能性は低い)

形態

ニシオンデンザメは、冷たい海に適応した大型の深海ザメです。

  • 体型:頭部は小さく、全体的に鈍重で太い体つきをしています。泳ぎはゆっくりですが、持久力に優れています。
  • 体色:灰褐色や黒っぽい鈍い体色をしており、深海の岩場に溶け込むカモフラージュ効果が高いです。
  • 寄生虫:目には寄生性カイアシ類(Ommatokoita elongata)が付着していることが多く、これにより視力が低下している個体が多いのが特徴です。

生態

寿命:400年の長寿

アイスランド沖で捕獲された個体の眼球(水晶体)のタンパク質を放射性炭素年代測定した研究から、寿命が400年以上に達すると報告されています。これは脊椎動物の中で最長寿です。成長速度は非常に遅く、成熟するまでに150年以上かかると推定されています。

代謝

極めて低い代謝速度を持ち、世界で最も低代謝の大型脊椎動物のひとつとされています。別名「スリーパーシャーク(Sleeper Shark)」と呼ばれる所以です。

食性

魚類やイカ類を捕食しますが、動きが遅いため、寝ているアザラシを襲ったり、トナカイなど大型動物の死骸を食べるスカベンジャー(腐肉食)としての性質も強いとされます。

繁殖

胎生(卵胎生)。一度に10匹前後の仔を産むと考えられています。

人との関わり・危険性

ニシオンデンザメは人を襲うことはなく、危険性は極めて低いサメです。

底延縄漁などで混獲されることがあります。肉にはトリメチルアミンオキシド(TMAO)という毒素(尿素が分解されたもの)が多く含まれ、そのまま食べると中毒症状を引き起こします。

しかし、アイスランドやグリーンランドでは、この肉を数ヶ月間発酵・乾燥させて毒を抜いた伝統食品「ハカール(Hákarl)」として食用にされています。強烈なアンモニア臭があることで有名です。

トリビア

  • 長寿伝説:研究では寿命400年超、最古の個体は「1600年代(江戸時代初期)に生まれた可能性」まで示されています。
  • 寄生虫との共生?:目につくカイアシ類は視力を奪いますが、生物発光して獲物を引き寄せるルアーの役割を果たしている可能性も指摘されています(諸説あり)。

まとめ

ニシオンデンザメは、北極海・北大西洋に生息する深海の大型サメで、驚異的な長寿命と低代謝を持つ「深海の長老」ともいえる存在です。毒のある肉を発酵させた「ハカール」など、極寒の地ならではの食文化とも深く関わっています。

FAQ(よくある質問)

Q1. ニシオンデンザメは人を襲いますか?

いいえ。人に危険を及ぼすことはほとんどありません。

Q2. 本当に400年も生きるのですか?

はい。科学的な研究により、寿命が400年以上に達する可能性が示されています。脊椎動物で最も長生きです。

Q3. 食べられるのですか?

はい。ただし生の肉には毒(TMAO)があるため、発酵させて毒を抜いた「ハカール」という伝統食として食べられます。

Q4. どこで見られますか?

北大西洋や北極海。特にアイスランドやグリーンランド周辺の深海で記録が多いです。

参考文献・出典

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