オーストラリアのサメ保護と安全対策|州ごとに違うサメと人の関係

世界のサメと人のくらし|オーストラリア編

サメを守りたい。でも、海で泳ぐ人の安全も守りたい。オーストラリアでは、この二つをどう両立させるかが大きな課題になっています。

ホホジロザメなどを保護する制度がある一方、海岸ではサメの監視や捕獲も行われています。しかも、同じ国の中でも州や海域によって対策は違います。

「サメが好きな国」「嫌いな国」という分け方では見えてこない、サメと人の複雑な関係を見ていきましょう。

この記事でわかること

  • オーストラリアで保護対象になっているサメ
  • ドローン・発信器・捕獲装置を使う海岸の対策
  • 州や海域によって、捕まえたサメの扱いが違う理由

オーストラリアは、サメを保護する制度を持つ国

オーストラリアの連邦政府は、環境保護・生物多様性保全法(EPBC法)に基づき、絶滅のおそれのある種や移動性の種を指定しています。サメも、その対象に含まれています。[1]

連邦政府の一覧では、ホホジロザメとジンベエザメは「Vulnerable(絶滅危惧の区分の一つ)」と「Migratory(移動性)」に指定されています。

シロワニは、東海岸の個体群が「Critically Endangered」、西海岸の個体群が「Vulnerable」とされ、同じ種類でも地域によって指定が異なります。[1]

映画などで怖い印象を持たれやすいサメでも、保護の対象になり得る。ここが、オーストラリアのサメとの関係を知る最初のポイントです。

ここでの区分はオーストラリアのEPBC法上の指定です。世界全体を評価するIUCNレッドリストの区分とは区別してください。

ニューサウスウェールズ州:複数の方法でサメを監視する

シドニーがあるニューサウスウェールズ州(NSW州)では、ドローン、発信器を付けたサメの検知、SMARTドラムライン、サメ用ネットなどを組み合わせています。[2]

ドローンで海を見る

ドローンは上空から海を監視するために使われます。サメを捕まえる装置ではなく、人が海を利用するときの判断を助けるための道具です。

発信器を付けたサメの接近を知らせる

NSW州では、対象のサメに発信器を取り付け、受信設備で検知する仕組みも使っています。検知情報はSharkSmartアプリなどで伝えられます。[2]

ただし、この仕組みが検知するのは発信器を付けたサメです。海にいるすべてのサメを探せる装置ではありません。

SMARTドラムラインとは?

ドラムラインは、浮きなどにつないだ餌付きの針でサメを捕まえる装置です。NSW州のSMARTドラムラインには、捕獲を知らせる通信機能があります。

動物が餌を取り、糸に力がかかると担当者へ通知が届きます。担当者が対応し、対象のサメにはタグを付けて沖へ移し、放流する運用が説明されています。[3]

「捕まえる」と「殺す」は、同じではない
捕獲後に放流する運用もあります。ただし、針を使って捕まえる以上、サメに負担がない方法だと言い切ることもできません。

こうした対策があっても、リスクがゼロになるわけではありません。NSW州政府も、サメによる事故が二度と起きないと約束することはできないと説明しています。[2]

サメ用ネットは、海岸を囲む「壁」ではない

「サメ用ネットがある」と聞くと、泳ぐ場所をぐるりと囲み、サメの侵入を防ぐ網を想像するかもしれません。

しかし、オーストラリアの国立科学機関CSIROは、NSW州のサメ用ネットについて、サメが海岸へ入ったり出たりすることを防ぐものではなく、泳いで網に遭遇したサメを絡め取るものだと説明しています。[4]

つまり、網があることだけで、泳ぐ場所にサメがいないとは判断できません。「見つける」「捕まえる」「人とサメを物理的に分ける」は、それぞれ違う方法なのです。

また、捕獲装置には、目的としていない海の動物もかかる可能性があります。安全対策を選ぶときには、海の生き物への影響も考える必要があります。クイーンズランド州の計画でも、網に絡まったクジラの救出や、絡まりを減らす研究が扱われています。[5]

クイーンズランド州:同じ国でも、捕獲後の扱いが違う

クイーンズランド州(QLD州)の「2025~2029年サメ管理計画」は、人の安全を運用の中心に置き、従来型のドラムラインとネットの継続使用を掲げています。ドローンも併用する方針です。[5]

計画では、州が管理する海域で捕まえた対象種のサメは殺処分すると説明されています。一方、連邦のグレートバリアリーフ海洋公園では、許可条件に基づき、安全に実施できる場合は対象のサメを移動・放流する扱いです。[5]

保護と捕獲対策は、適用される制度や許可条件を含めて見る必要があります。「この国はサメを全部守る」「全部捕まえる」という一言では、実際の運用を説明できません。

この記事で取り上げた二つの州の例
地域主な対策の例捕獲後の扱いの例
NSW州ドローン、受信設備、SMARTドラムライン、ネットSMARTドラムラインでは、対象のサメをタグ付け・移動・放流
QLD州従来型ドラムライン、ネット、ドローン州管理海域の対象種は殺処分。連邦海洋公園では安全に可能な場合、移動・放流

2026年10月9日に確認した公式資料に基づく例です。表は各州のすべての海岸・装置・捕獲結果を示すものではありません。

オーストラリアから学べること

オーストラリアの例は、サメを守ることと、人の安全を守ることを一緒に考える難しさを示しています。保護対象の指定だけでなく、海岸での実際の運用も見ると、その関係がわかります。

パラオ編では、サメの保護と観光・地域の暮らしのつながりを紹介しました。今回のテーマは、海を利用する人の安全と、海の生き物への影響をどう考えるかです。

国を比べるときは、「好き・嫌い」の順位よりも、何を守ろうとしているか、どんな方法を選んでいるか、どんな限界があるかに注目してみましょう。

考えてみよう
サメを見つけるドローンと、サメを捕まえるネット。それぞれの方法で、できることと、できないことは何でしょうか。

オーストラリアのサメ対策について、よくある質問

オーストラリアではホホジロザメが保護されていますか?

ホホジロザメは、連邦政府のEPBC法上でVulnerableとMigratoryに指定されています。ただし、海岸の安全対策の運用は、地域の制度や許可条件も確認する必要があります。

サメ用ネットがある海岸には、サメが入れませんか?

NSW州のサメ用ネットは、海岸を完全に囲む壁ではありません。CSIROは、サメの出入りを防ぐものではなく、網に遭遇したサメを絡め取る装置と説明しています。

SMARTドラムラインは、サメを殺すための装置ですか?

NSW州のSMARTドラムラインは捕獲時に通知し、対象のサメをタグ付け・移動・放流する運用です。ただし、捕獲がサメに負担を与えないという意味ではありません。

オーストラリア全体で、同じサメ対策をしていますか?

州や海域によって対策は異なります。NSW州のSMARTドラムラインとQLD州の従来型の捕獲対策では、対象のサメの扱いにも違いがあります。

参考資料

  1. オーストラリア連邦政府:EPBC Act listed sharks and rays(2026年1月16日更新)。サメの指定区分。
  2. NSW州政府:Current Program。2026~2027年の対策、ドローン・検知設備など。
  3. NSW州政府:SMART Drumlines。通知・タグ付け・移動・放流の仕組み。
  4. CSIRO:What is the purpose of shark nets?(2020年12月24日更新)。ネットの仕組みの説明に使用。
  5. QLD州政府:Queensland shark management plan 2025 to 2029(PDF)。運用方針は本文10~11ページ、対象種の扱いは7ページを参照。

資料確認日:2026年10月9日。安全対策や制度は更新されるため、海を利用する際は現地の最新の案内を確認してください。

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