
サメは、目・耳・鼻だけでなく、電気や水の動きを感じ取る、とても不思議な力を持っています。 この能力のおかげで、サメは海のなかですぐれたハンターとして生き抜くことができます。 ここでは、サメの“第六感”について、くわしく見ていきましょう。
サメの感じる力:全体像
サメの持つ五感に、もう一つ特別な感覚が加わっています。
- 視覚(見る): 水中でもわずかな光や動きをとらえます。夜や暗い場所でもよく見えるように、目の奥に反射する部分を持っています。
- 聴覚(聞く): とおく離れた場所の、低い音(低周波)をよく聞き取ります。魚の群れが起こす音や、弱った獲物が出す音も聞き分けられます。
- 嗅覚(におい): とても敏感で、血のにおいを数キロメートル先からでもかぎつけることができます。
- 触覚(側線): 体の横にある側線という特別な器官が、水の流れや振動をキャッチします。これにより、暗い海でも近くの生きものの動きを察知できます。
- 電気を感じる力: これが、サメの“第六感”です。他のほとんどの生きものにはない、特別な能力です。
ロレンチーニ器官:電気を感じるセンサー
サメの鼻先や頭の近くには、ぶつぶつと小さな穴がたくさん開いています。 この一つひとつの穴がロレンチーニ器官です。
この穴の中は液体(ゼリー状)で満たされ、電気をよく伝えます。 生きものは動くときに、筋肉からとても弱い電気を出しています。 サメは、このわずかな電気信号をロレンチーニ器官で感じ取り、 たとえ目に見えなくても、砂の中にかくれたり、岩の影にいたりする 獲物の場所を正確に知ることができます。

なぜ“第六感”が必要なのか
- 獲物を確実に見つける: 深海のように光の届かない場所や、濁った水の中では、 目だけでは獲物を見つけるのは困難です。 電気を感じることで、視覚にたよらなくても獲物の居場所を 特定できます。
- 効率よく狩りをする: たとえばホホジロザメは、獲物を襲う 直前に目を白くして、ケガをしないように目を守ります。 このとき、電気を感じる力で獲物の位置を確認していると考えられています。
- 自然なナビゲーション: 地球の地磁気から発生する微弱な電気も感じ取り、 大海を長距離回遊するときの 海の地図として利用しているという説もあります。
まとめ
サメの“第六感”である電気を感じる力は、ロレンチーニ器官という特別なセンサーによって支えられています。 この能力のおかげで、サメは視覚や嗅覚が 使えないような状況でも、獲物を正確に見つけ出すことができます。
サメが4億年もの間、地球の海の王者として君臨してきたのは、 このような驚くべき適応があったからなのです。
関連リンク
参考文献・出典
- FishBase https://www.fishbase.se/
- FAO Fisheries & Aquaculture http://www.fao.org/fishery/
- Smithsonian Ocean Portal https://ocean.si.edu/
- Shark Trust https://www.sharktrust.org/
- 『Sharks of the World』(Princeton University Press)